米朝首脳会談決定も、交渉のプロが「成果は出ない」と断じる理由

 

昨年の共同宣言以降、進むはずの何らかの非核化に向けた動きは、あくまでもポーズだけで、実際には核開発は継続していますし、ミサイル開発も進められています。韓国の国際社会への裏切りもあり、制裁下で禁止されている石油などの瀬どりが行われ、北朝鮮を追い込む包囲網は完全に崩れています。

そして“裏切り”に加え、日本の海上自衛隊P1哨戒機への火器管制レーダー照射問題が日米両国の怒りの火に油を注ぐ結果になっています。トランプ大統領もすでに韓国を見切っており、それがアメリカの外交戦略にも反映されています。

これまで、何度か北朝鮮攻撃が計画されましたが(直近では、クリントン―ブッシュ時代)、同盟国韓国への被害を考慮して、踏みとどまってきました。しかし、現在の冷え切った米韓関係と、文政権によるアメリカ無視の姿勢により、トランプ大統領は北朝鮮攻撃を躊躇う材料がないと判断しているようです。

つまり、今回の第2回米朝首脳会談が、全く具体的な成果を生まず、米国内および国際社会から批判されるような状況になれば、かなり高い確率でアメリカによる北朝鮮攻撃が起きます。それはつまり協議の終結です。

その時、韓国はどのような動きをするのか?中国は?そしてロシアは?非常に憂慮すべき状況なのですが、この3週間足らずの間に、米国民も、そして国際社会も納得するような合意の種を作れることを願って、最悪のシナリオについては、今回は書かないでおこうと考えています。

しかし、私の見立てでは(いろいろな情報を総合的に分析すると)、非核化に関する実のある内容はもちろん、朝鮮戦争の終結と平和条約締結に関するネタも、特に大きな成果は出ないと思います。

そして、注目すべきは、米朝首脳会談直後に行われる予定の米中首脳会談の行方でしょう。具体的な合意が出来なかったことに気をよくした習近平国家主席がニコニコしている裏で、かつてフロリダでの米中首脳会談の夕食時にあったように、トランプ大統領が「北朝鮮にミサイルを撃ち込んだ」とでも耳打ちするような事態になるかもしれません。

そうなったら、まさに混乱こそしていても微妙なバランスで安定していた北東アジア地域は、一気に混乱と戦争の時代に突入することになるでしょう。今回の米朝首脳会談は、恐らく、アメリカの対北朝鮮最後通牒のきっかけとなるのかもしれません。

皆さん、どうお考えになりますか?

image by: Hadrian, shutterstock.com

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