バイト炎上動画で「人生終了」に違和感。本当に悪いのは誰か?

 

では、そうしたチェーン店ではどうして現場への分配が低いのでしょう。セントラルキッチンでの作業が主で、現場が付加価値を乗っける幅は小さいということはあるでしょうし、マニュアルで回るように設計する分だけ、その設計の作業が重く、現場は言われたことをやっているだけということもあるかもしれません。

ですが、仮にそうだとして、「チェーン一括購入で高機能の什器が安く入る」とか「一括で宣伝してもらえるので集客力がある」といったチェーンのメリットもあるはずです。にも関わらず、オーナー経営なら粗利3割ぐらい儲かっていたはずの外食で、現場仕事が時給900円とか1,000円というのは、どうしてなのでしょうか?

それは本部がロイヤリティという形で収益を召し上げているからです。飲食の場合はそもそも原価率が高いので、10%ぐらいと言われていますが、それでも、その収益を取られる中では、現場では人件費には大きな金額をかけることはできません

結果的に、高額な賃金は払えないわけですから、人手不足の中で、「バカッターをやると特定されるよということすらも分からないレベルの人材を集めて作業を回すしかないわけです。

では、チェーンの本部というのはロイヤリティを召し上げて、それこそ本部社員は豪華な生活をしているのかというと、決してそんなことはありません。では、巨額のロイヤリティはどこへ消えるのかというと、「本部の事務仕事コスト」に消えていくのです。

勿論、本部の基幹業務は正社員ですから、それなりの大企業水準の年収は払っているでしょう。ですが、コンビニにしても、外食にしても本部の社員の仕事はかなりキツイと思います。営業やエリア責任者などには過酷なノルマがありますし、仕入れも物流も大変な仕事です。

つまり、昔は自営でやっていて、十分に儲かっていたソバ屋とか、中華屋などの業態が、全国チェーン化することで、現場では時給仕事が本部ではヘトヘトな事務仕事が発生しているだけなのです。

その上で、全員が疲弊しながら「バカッターが出ると株価が下がるので、全額補償しろ」とか無茶な話が出てくるわけです。更には「バカッター防止のためには研修しかないので、研修を徹底する」というのです。

つまり、この全国チェーンというシステムは全員が不幸になるようにできており、その最大の問題は「本部の事務仕事というコストにあると言うことが言えます。

勿論、こう申し上げると「別に無駄な事務仕事はしていない」のであって、「本部がしっかりしていると、チェーンのブランドが集客効果を持つ」と言う主張が返ってきそうです。「そのブランドが傷つけられたので、今回の事件は許せない」というのも確かにそうでしょう。

ですが、そのブランドにしても、結局は本当にお客さんに愛されて信頼されているのかというと、それは大したことはなく、結局は「事務仕事をやっている本部のモラル維持の求心力に過ぎないとも言えます。

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