バイト炎上動画で「人生終了」に違和感。本当に悪いのは誰か?

 

では、どうして昭和の時代とは違って、ソバ屋にしても、町中華にしても、あるいは食料品店にしてもチェーン化してしまったのでしょうか?

問題は、カネが回らないということだと思います。

しっかりした板さんが自前の寿司屋を開業しようとする、あるいはちゃんと修行した人が町中華屋さんやソバ屋をやろうとする、そんな場合にも、個人で融資を受けることは日本では非常に難しいわけです。

そこには、日本の銀行が「事業計画と人材を評価して与信をする」というノウハウをとっくの昔に放り出したということがあり、また「日本国内にはリスクの取れるマネーがない」ということもあります。

この辺をなんとかクリアして、外食にしても、コンビニにしても、個人経営の店が活気を持った経営をするようになれば、デフレムードを反転させることも可能なのではないかと思うのです。

コンビニといえば、「消費期限を7時間ごまかして弁当を売った」という罪で、2店舗を回していたオーナーは契約解除されて廃業に追い込まれました。恐らく補償金も請求されて、この人も破滅することになると思います。これも過酷な話で、しかもブランド名を入れて報道がされ、ブランドの看板を「引っぺがされた」無残な店の跡までTVニュースで晒されています。

そこまでやらないと「ブランドの信頼は回復されないと考えている本部も異様だと思うのですが、そんな過酷なチェーンのマネジメント「しか」成立しない中で、独立の「100%自前のオーナーコンビニ」というのは、銀行が金を貸さない中では難しいわけです。

外食も、コンビニも、本部に巨額な金を吸い取られ、本部は日本語での形式的な事務仕事という膨大なコストに吸い取った金を消費しています。そこにあるのは、ブランド価値が商売の源泉という信仰で、今回のバカッターや「7時間の消費期限改ざん」というのは、そのブランド価値を傷つけたということで、「人生が終わる」レベルの懲罰を受けるわけですが、この全体構造には人間を不幸にする回路しかないように思うのです。

いかにもプリンターから吐き出されました式の「宣伝のぼり」で集客する全国チェーンのコンビニや外食、そこでは現場には多くが分配されずしかも警察のような統制や監視で現場が支配されているわけです。そして権力をかざしてロイヤリティを徴収している本部も、日本の大企業につきものの非効率な事務仕事に多くのコストを消費し、その対価としてブランド価値を維持しているという信仰を続けています。

なんとか、金融面での仕掛けを考えて、外食産業と、地域に根ざした食料品店という業態を、一国一城の主の経営する人間的な独立店、まさに血の通った「生業(なりわい)」として再生させることはできないものかと思うのです。

image by: Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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