バイト炎上動画で「人生終了」に違和感。本当に悪いのは誰か?

 

3つ目は、刑事責任についてです。偽計業務妨害というオドロオドロしい罪状となるような報道がありますが、問題は「業務妨害などは意図していなかった」という点にあります。つまり、本人たちは「場所や店名を晒される」などということは知らなかった可能性があり、「身内だけでコッソリ受ける」秘密のイタズラという認識だったことになります。

そうなると、別に犯意はなかったことになるわけで、果たして刑事的に立件できるのか疑問です。

そんなわけで、違和感を感じてしまうのは事実です。勿論、私自身がアメリカという「悪意のない悪ふざけというのは基本的に許されてしまう社会にいるので、その影響を受けているのかもしれませんが、それにしても「人生詰んだ」とか「親も含めて全財産で弁償」というのには違和感を感じます。

ここまでは、単なる感想に過ぎませんが、もう少しこの事件を真面目に考えてみると違う構造が浮かんできます。

それは、昭和の昔は外食産業の現場はもっと儲かっていた」という話です。

例えば寿司屋というのは、板さんが師匠の店で何年も修業した後は、暖簾分けをさせてもらって、自前の店を持つことが多かったわけです。勿論、今でも超高級店はそうかもしれませんが、中級店は回る寿司屋に押されて成立しない中で、多くの人は回る寿司屋に行かざるを得なくなっています

その回る寿司屋というのは大企業ですが、現場は徹底的にマニュアル化されています。ですから誰でも、それこそ「バカッターをやると晒されることが分からないレベルの人でも現場が回せるようにできています。ですが、その分、現場の取り分は猛烈に少なくなっていて最低賃金プラスアルファの時給程度の仕事になっているわけです。

ラーメンもそうです。勿論、味で勝負できるところは自前の店を構えて儲かっている人も多いわけですが、一方でチェーン店の場合は結局本部主導で、セントラルキッチンからくる食材をマニュアルで調理する格好になり、現場には時給仕事しかありません

昭和の昔ですと、グルメ志向でなくても、それこそ平凡な屋台のラーメンでも、仕事はキツイ一方で儲けはしっかりありました。10年屋台を引けば、アパート一棟建てて、残りの人生は家賃収入で悠々自適というような話が結構あったのです。ですが、そうした形での現場が儲かる仕組みはどんどん消えています

ひどいのはソバ屋という業態で、以前はみんな自営で結構儲かっていたのが、今は、チェーンの立ち食いソバ的なものがレベルアップする中で、デフレ経済にマッチして受けています。その結果として、よほど工夫しないと独立経営の店は成立しなくなっているわけで、古き良き町のソバ屋というのはほとんど消滅してしまいました。

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