どうして、こんな珍奇なことを首相ともあろう人が言い出したのか。朝日新聞に答えが載っていた。
あの櫻井よしこ氏が共同代表兼広告塔をつとめる日本会議系「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の大会が昨年12月5日に開かれ、チラシが配られたという。それに関する次の記述。
チラシには、東日本大震災で救助活動にあたる自衛隊員の写真とともに「災害救助を要請する自治体が、なぜか自衛隊員募集には非協力」とある。裏面では「全国六割の自治体が、自衛隊員募集に非協力的」とし、「自治体が円滑に業務を遂行するため、自衛隊の憲法明記を!」と訴えている。
(2月16日朝日新聞)
安倍首相はこれをそのまま借用したようだ。
先述したように、たとえ国の要請があったとしても、自治体が個人の情報を慎重に扱うのは当然のことである。自衛隊が憲法に明記されることとは問題が全く別だ。
違憲論争にしても、いったいどこで熱を帯びているというのだろうか。憲法学のうえでは厳密に条文が解釈されるため、自衛隊は違憲かと新聞社のアンケートで問われれば、違憲と答えざるを得ないこともある。
自衛隊の段階的解消を掲げる共産党ですら「政権を担ったとしてもすぐに手をつけるつもりはない」(志位委員長)と、あくまで現実路線だ。
日本人のほとんどは、自衛隊の必要性を認めているのではないか。だが、学問としての自衛隊違憲論は、存在する。それが、明治憲法への回帰を願う政治、思想団体に都合よく改憲の理由として利用されているのが現実だろう。
それにしても、安倍首相によるこじつけは度が過ぎている。
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