「官邸の関与」が判明した統計不正。説明責任を持つ政治家の実名

 

厚労省出身の参事官を通じて情報を入手できる官邸が、その流れを黙って見過ごすことはなかった。9月16日の検討会会合を意識し、中江秘書官は厚労省側と話し合いを続けていた。

それは9月4日に厚労省から阿部座長に届いた「官邸関係者に説明をしている段階であります」という内容のメールで確認できる。

加えて9月3日、安倍首相の関心が一気に毎月勤労統計に向かう出来事があった。

同日午後の参議院厚労委員会で小池晃議員から賃金など労働問題に関する質問を受けることになっていたため、中江秘書官は安倍首相に勤労統計の問題について答弁レクを行なったのだ。その場で安倍首相から明確な意思が示された可能性は十分にある。

以下は、同委員会における安倍首相と小池議員のやりとりの一部だ。

小池議員 「総理、一人当たりの給与が伸びない最大の要因が非正規雇用の拡大であることを認めますか」

 

安倍首相 「実質賃金におきましても、4月、5月とゼロ近傍まで改善をしてきております。6月には名目、実質共にマイナスとなりましたが、これは本年1月に行った調査対象事業所の入れ替えもありまして、相対的にボーナスの支給額が大きい30人以上の事業所において6月に支給した事業所の割合が昨年に比べて4ポイント以上も低かったものによるものと考えております」

これから約10日後の9月14日昼過ぎ、官邸で決定的な面談が行なわれた。中江秘書官は姉崎氏らに「総入れ替え」を「部分入れ替えに変更するよう強く求めたとみられる。

衆院予算委員会(今年2月22日)で姉崎氏がこう語っている。

記憶では9月の14日、ボーナスの状況について説明に行った。夏の賞与はどれくらいかというのが大きな関心事だった。…秘書官からは、実態を把握する観点から言うと部分入れ替えが良いというようなコメントをいただいた。

中江氏は「4年前のことなので、よく覚えていない」と、安倍総理秘書官の“常道”を貫いている。姉崎氏も「指示されたことはない」と繰り返す。

しかし、その9月14日午後4時過ぎに姉崎氏の部下から阿部座長に送られたメールが真相を生々しく伝えていた。

委員以外の関係者と調整している中で、サンプルの入れ替え方法について、部分入れ替え方式で行うべきだとの意見が出てきました。…報告書案では総入れ替え方式が適当との記載を予定していました。このため第6回会合では報告書案ではなく、中間的整理案の議論ということでとりまとめを行わせていただきたいと考えています…検討会開催前の突然の方針変更等でご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

「委員以外の関係者」が当時の中江秘書官をさすことは明らかだ。「総入れ替え」を「部分入れ替えに」という官邸の意向を中江秘書官に示されたことが、メールの文面から読み取れる。

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