カイゼンの鬼が生み出した、トヨタ自動車「ものづくり」のカギ

chichi20190308
 

長年、生産効率を上げるため徹底して無駄の削減を追及しているトヨタの現場。作業手順に始まり、環境や人員の配置など、多岐に渡る項目を細かくルール化するために、これまでいったいどのようなことが実行されてきたのでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、トヨタ相談役を務める張富士夫さんが、実際の現場で、その道20年の先輩から叩き込まれた「無駄の削減を追求するための心構え」を語っています。

トヨタのものづくり 張富士夫(トヨタ相談役)

私が弟子入りした頃、大野耐一は既に20年にもわたって無駄のないつくり方を追求してきた大ベテランで、私は現場へ出る度に、「この無駄が見えんのか」と叱られたものです。最初に言われたのも、「いいか張、現場には仕事と無駄の二つしかないと思え」ということでした。

組み立ての現場へ行くと、ネジを締める時にビビビッという音がします。大野はそこで私に目をつむるように言い、「いま聞こえる音が仕事だ。音のしないところは全部無駄だ」と言うのです。これはちょっと極端な例ですけど、私はそのようにして、現場でのものの見方を大野から教わってまいりました。

無駄にもいろいろありますが、トヨタでは手待ち、2度3度手間やり直し不良運搬つくり過ぎの無駄を徹底して削減してまいりました。

手待ちというのは、仕事がない状態を言います。例えば、材料を機械にセットしたら刃物がダーッと動き出します。その間は手を出せないのでただ見ていると、それはもう仕事ではなく、手待ちの無駄になっているというわけです。

あるいは、部品の加工が1回で済まずに、もう1回同じことをやるのは二度手間になります。また、部品を適当な場所に仮置きして、後でまた移動することもあります。最初からちゃんと置き場を決めておかないのでやり直しの無駄が生じてしまうのです。それから、不良を出してしまうと別のもので充当しなくてはなりませんから、これも無駄。

さらに運搬の無駄というのもございます。フォークリフトなどが何も載せずに工場内をグルグル移動していると、「流しのタクシーじゃないんだぞ」と叱られるわけです。運搬の詰め所をきちっと定めておいて信号が出たらすぐに部品を載せて持って行き空箱を持って帰る。そうやって運搬の無駄を省けば余剰な人員も明らかになるのです。

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