堕ちた法の番人。横畠長官の大失言で判る政権の「俺たち偉い病」

 

小西議員は2015年5月19日の参院外交防衛委員会で、元内閣法制局長官、宮崎礼壹氏が朝日新聞に語ったインタビューの内容(下記)を突きつけて、安倍政権におもねるように変節した横畠長官の姿勢をただした

–日本と密接な関係の他国への攻撃に対しても、武力行使できるようになりました。

 

「法案に憲法違反の集団的自衛権行使容認が明示されているのは、重大な問題だ。…他国防衛を本質とするものであって、現憲法9条の下では認められないという解釈を根底から覆し…米国の要請さえあれば際限のない海外での武力行使に道が開かれてしまう」

宮崎氏は2006年から2010年まで内閣法制局長官をつとめた。第1次安倍内閣から鳩山内閣にまたがっている。横畠氏はその時期、法制局第二部長として仕えていた。

小西議員はこう言って詰め寄った。

「横畠長官、元上司として仕えられた長官が…集団的自衛権の行使容認は憲法違反であるとおっしゃられています。宮崎元長官とは異なる見解をお持ちだということでよろしいですか

横畠長官は「御指摘のとおりでございます」と答えた。内閣法制局が変質したことを長官自ら認めた瞬間だ。小西議員のこれに対する批判は強烈だった。

「宮崎氏以外にもかつての元長官の方々が良心を持って発言をされている。法制官僚はあらゆる政治的な圧力をはね飛ばして客観的な法の解釈を守るのがあるべき姿だ。長官もそこに戻っていただきたい。そうしなければ長官の手によって憲法違反の戦争で自衛隊員が、日本国民が死んでいくことになる。安倍総理の顧問弁護士があなたの職責ではない

横畠長官は肺腑をえぐられる思いだったのではないだろうか。一度は、宮崎氏ら歴代長官と同じ矜持のある法制官僚と安倍官邸に“誤解”され、外務省官僚の小松氏を上司の長官に据えられるという前例なき仕打ちを受けた横畠氏が、小松氏の病状悪化によってようやく就くことのできた法制局長官の座だ。

安倍官邸に寄り添ってこの座を死守したいという思いの半面、後ろめたさがなかったとは言えまい

あの日の国会風景を思い出す。2014年2月12日の衆議院予算委員会。小松内閣法制局長官が検査入院中だったため、次長の横畠氏が代理出席していた。

大串博志議員が「解釈変更で集団自衛権を行使できると(安倍首相は)言う。同じ答弁を内閣法制局はできますか」と質問したさい、横畠次長が立ちあがるのを制するように、安倍首相が「俺が答弁する総理大臣だから」と声を上げたことがあった。

この時点では、横畠氏が意に沿うような答弁をしてくれるかどうか安倍首相に不安があったのだ。

その後、小松長官の病状が悪化し、後任を決める段階で、横畠氏の安倍官邸に対する忠誠心は固まっていったのだろう。

小西議員から見ると、横畠氏は依然として、法の番人というより「安倍総理の顧問弁護士」だ。

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