一方、横畠長官にすれば、小西議員はつねに激しい言葉で自分を攻撃してくる「天敵」だ。その男から2015年9月4日以来、久しぶりに出席を求められたのが3月6日の参議院予算委員会だった。
横畠長官は小西議員からの質問に「突然のお尋ねでございまして…」と笑みさえ浮かべて話しはじめ、「声を荒げて…まで含むとは考えておりません」と語気を強めて締めくくった。
その態度が不遜に見えたせいもあるだろう、場内に怒号が飛び交った。審議が中断し、与野党の理事が協議したあと、再び、横畠長官が答弁に立った。
「声を荒げてという部分については委員会において適否を判断することであり、私が評価をすべきことではありません。撤回いたします」
「ダメ!」と森ゆう子議員らが立ちあがり、またも審議は中断。与党議員から再度説得された横畠長官は、「越権行為でしたので、この点についてはお詫びをして撤回させていただきます」と、ようやく謝罪した。
3月8日の参院予算委員会では、金子原二郎委員長から「横畠内閣法制局長官の…発言は法制局長官の職責、および立場を逸脱するものであり、誠に遺憾であります」とお咎めを受ける羽目に。
ことの重大性をようやく認識した横畠長官は「行政府にある者の発言としてその立場を逸脱したまことに不適切でありました。…ここにあらためてお詫びを申し上げます」と神妙な面持ちで述べた。
自民党の石破茂氏は漫画家、小林よしのり氏が開いた討論会に出席し、横畠長官の言動について、安倍政権にかかわる皆が「“俺たち偉い病”にかかっているのでは」と、語ったという。
そんな病気にかかった67歳の眼からは、政治家としてまだ若い47歳の小西議員などは生意気に見え、憎々しくて仕方がないだろう。見下し、憎悪しているがゆえに、「声を荒げて」というあの余計な発言がつい出てしまったのかもしれない。
内閣の補佐機関であっても一定の距離を保って法を語るべき人が、一時の感情を抑えられず、政治家の言動を批判した。前代未聞のことだ。憲法解釈の客観中立性にも、いっそう疑念が深まることとなった。
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