まず国民の熱い支持を得ないと
こういう惨めな結末となることは、本誌が当初から指摘してきた通り〔注〕、見えていたことで、その根本原因を一言でいえば、安倍首相の詐話師の手法である。「旧ソ連は4島を不法占拠した」「4島一括返還しかありえない」という長年の公式態度を破棄して、「2島のみ返還」を求めることに大転換するのである以上、それを筋道立てて国民にきちんと説明して支持を取り付けなければおかしい。
〔注〕
● 北方領土返還でプーチンの「餌」にまんまと引っかかった安倍首相
● 前のめりに突っ込んで大火傷をしそうな『北方領土』外交
ところが安倍首相は「北方4島」という言葉を封印して「日本の主権のある島々」などと島がいくつなのか曖昧にする言い方に変えたり、「2島プラスアルファ」と言ってかつての「2島先行返還」とわざと混同させる──つまり「もしかしたら2島ポッキリでないのかな」と錯覚を起こさせるような言葉遣いをして、国民に目眩ましをかけてきた。その裏には、たぶん、どうせ国民は馬鹿で細かいことを言っても分からないのだから、日露トップ同士で2島で基本合意をして「島が帰ってくるぞ!」「えっ、4島じゃないの?」「2島でも何も帰ってこないよりマシだろう」という調子でワーッと盛り上げて、そのままの勢いで参院選に持って行ってしまえば勝ち──といった、恐るべき国民蔑視の傲慢な考えが潜んでいるのだろう。
しかし領土にまつわる外交交渉で、国民に本当のことを言わずに口先だけの嘘を乱発してスリ抜けようとしても巧く行くわけがない。安倍首相は策に溺れて自ら墓穴を掘ったのである。
image by: 首相官邸
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年3月18日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。
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