中国お得意の汚いやり口。習近平に魂を売るイタリアの厳しい前途

 

EUの成立は、はじめは独仏が中心でしたがいつしかドイツだけが主役となっていきました。イギリスのEU離脱が大きな問題となっていますが、ドイツ以外のフランス、イタリア、スペインなどは、ますます脇役に転落していくでしょう。そこで中国の触手がEUに伸びてきているのです。

ギリシャやイタリアは現在左翼政権ですので、中国としても手を組みやすいわけです。また、債務に悩む国々は、たいていEUにも中国にも政治利用されてしまことが多く、決して一方的な思惑で決めることができません。

マクロン大統領の「中国に甘い考えを抱く時代は終わった」という発言は、EUの対中心戦略であると同時に、対独牽制の意味もあるでしょう。ドイツはEU内でも、フォルクスワーゲンをはじめ、中国への傾斜が強い国です。米中貿易戦争による国際経済力の変動については、戦後処理や経済秩序の軌道修正という側面も含まれていると思われます。

それはともかく、ギリシャは急接近する中国に対して同国最大のピレウス港を売却することになりました。そして今度はイタリアの番だというわけです。イタリアにとっては、ある種、EUがイタリアの危機に手を差し伸べてこなかったことに対する意趣返しの面もあるでしょう。

とはいえ、悪魔に魂を売ってしまったようなものですから、イタリアの前途は厳しいものになると思われます。同様に、ギリシャやイタリアが中国の拠点となれば、EU諸国にとっても脅威となります。

すでにイタリアの署名に対しては、国内の連立政権内やアメリカからも反発が出ています。米国家安全保障会議(NSC)は、「中国の虚栄心のためのインフラプロジェクトに正当性を与えないようイタリアに求めました

中国国家主席、イタリアに到着 「一帯一路」巡り覚書締結へ

一方、中国に対して厳しい発言を行ったフランスにしても、3月25日の習近平・マクロン会談では、中国がフランスのエアバス300機を購入することで合意し、中・仏が12億ユーロをかけてコンテナ船10隻を新たに建造することなどの大型契約が交わされたと、中国側が発表しました。

中国 仏エアバス300機“爆買い” 欧州と関係強化

これはアメリカのボーイングに対する中国の牽制でもあるわけです。とくにエアバスと競合するボーイングの機種は、5カ月間に2度の墜落事故を起こしたことで、運行が停止されており、また、米中貿易戦争に巻き込まれる形で、中国への販売が停滞している状況です。

エアバス、中国から3.8兆円の大型受注-競合ボーイングに新たな打撃

共同会見でマクロン大統領は「エアバスの巨大な契約というきょうの成果は重要な進展ですばらしいメッセージだ」と述べて歓迎しましたが、どこまで中国を信じているのかは疑問です。

というのも、2017年11月に習近平が訪米した際には、中国はボーイングから300機を購入することを約束しましたが、実際には2013年に成立した既存の契約をカウントしていただけだったということがあったからです。

ボーイングの中国受注、トランプ氏絶賛も大半は古い案件-関係者

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け