【今年の科学予想】エセ科学商品にご注意!感情的なストーリーに流されるな!

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★むしコラム「2015年におこりそうな5つのこと」

『堀川大樹メールマガジン「むしマガ」』Vol.271 2015/01/04

5年くらい前、つまり2010年前後に「そろそろ時代はこうなる」と言われてきたことが、昨年あたりから現実におこってきた感があります。具体的には、動画メディアや電子書籍の定着や、多数の教祖の誕生による小さな集団の林立だったり。後者はサロンや政治運動グループを含みます。いずれもIT革命がもたらしている現象ですが、2015年もやはりこのテクノロジーによる「評価経済」が世界に素早く浸透してくことでしょう。

要するに、個人も組織も「好かれ具合の絶対値」が評価軸になりやすくなる。これは、好むと好まざるとにかかわらず、そうなってしまうということです。評価の度合いが増幅されやすいシステムが次々と実装されていくからです。

個人の場合のわかりやすい例でいえば、クラスの人気者はますます人気者になり、嫌われ者はどんどん嫌われていくといった具合です。人気者の高評価が増幅されていくことは、SNSが「シェア」の仕組みを基本としていることから想像しやすいでしょう。嫌われ度が増幅する仕組みは、シェアに加えてブロックというコミュニティ外に追いやる装置が強力に機能します。

よく「ITは弱者に力を与える」といわれますが、ITが掘り起こすのはカッコよくてやる気はあるけれども光が当たっていなかった者だけであり、本当に弱い立場の人にはITは何も与えてくれない。ましてや、自分のことを棚に上げて他人の揚げ足をとってばかりの人は、どの世界のコミュニティからも疎外されていく。

このような評価の格差が増大する傾向が加速する結果として、2015年もいろいろな社会現象が生まれることでしょう。ということで、今回は2015年にさらに顕在化しそうなことを予想してみます。

1. マイノリティ層の増加

小学校や中学校の教育では、昔と変わらずに、いかに周囲と協調してまともな人間になるかを教え込んでいます。しかしながら、勤勉だけであり続ければ周囲のその他大勢に溶け込んでいき差別化がはかれなくなるだけでなく、まともであるがゆえにちょっとでもまともでない言動をとるとすぐに叩かれてしまうという、たいへんに損な役回りを担わなければなってしまいます。

そこで今年も増加すると思われるのが、どこからもツッコミを入れられないようなマイノリティ層です。身も心も男だけれども女の子の格好をする(おとこのこ)が昨今増殖していますが、このような一見セクシャルマイノリティにみえる人々がそこらじゅうに増えてきそうです。他にもずっと着ぐるみを着てすごす人々や、レオタード姿で街中を闊歩するような人々が増えてくるのではないでしょうか。

このような形で人々の多様化が進み、その中から新しいポップカルチャーが生まれてきそうです。

☆【参考】赤いレオタードでおまるにまたがる男性
(註: この男性が社会的プレッシャーをかわすためにこのような活動をしているかどうかは不明です)

2. 海外流出邦人の増加

若者を中心に物価の安い国に流れていく人が増えていくことが予想されます。ただ、ここでのポイントは、若者たちが移住をする理由が必ずしも経済的な事情だけに依らないことです。むしろ、国内における自分のプレゼンスに満足できないことが引き金となって国外に移動する場合が多いでしょう。

自分の劣等感をやわらげられるような環境に身を置きたい。このような理由で、「日本人」というだけで割と歓迎されるような国や地域への移住が人気になります。「英語を話せる西洋人」がウケる国に流れる西洋人が多いのと同じ理屈ですね。

「グローバル化」は意識の高い文脈でばかり使われますが、むしろこういう形でより多くの日本人が世界に広がっていくのではないでしょうか。

3. 市民政治運動グループの対立の激化

昨年はヘイトスピーチをする在特会とそのカウンター勢力の衝突が頻繁に起こりました。今年はこのような対立以外にも、さまざまな政治的および思想的な軸を挟んだ集団間の対立が顕在化しそうです。全体的には右傾化が進んでいる日本ですが、誰からも評価されず疎外感をつもらせた人々はどの方向にも向いていくことが予想されるので、小さな集団がさらに多くできてくるのではないでしょうか。

4. 似非科学商法の勃興

すでに似非科学商法は日本国内のあらゆる場面で目にするわけですが、SNSは悪徳業者が科学リテラシーが低く感情的なストーリーに流されやすい人々を釣るのに最適に設計されており、今年もあっと驚くような文言が付された似非科学商品が次々と現れてくるでしょう。

このような似非科学商品は大手ネットメディアやSNSでプレゼンスのある有名人や似非科学者によるステマで拡散していくため、まともな科学者による批判も焼け石に水でまったく防ぐ手だてはなさそうです。とはいえ、負け戦とわかっていてもこの状況を黙って見ているわけにもいきません。僕は毒を以て毒を制するやり方で一矢報いる準備をしています。

5. テクノロジー系ベンチャー起業ブーム

テクノロジー全般におけるインフラ整備が進み、市場に参加する障壁が下がってきました。そして、競争過多のアカデミアを去る人や大学院への進学を選択しないアカデミア肌の人材も増えてきています。この二つの要因がマッチしてきたことで、今年あたりからテクノロジー系ベンチャーの起業が増えてきそうです。

DMMが秋葉原にテクノロジー系スタートアップ企業向けのシェアスペースを走らせているように、民間による支援も活発になってきています。クラウドファンディングサイトのような投資を促進するプラットフォームも充実してきそうですね。面白く実現性のあるアイディアがあれば評価がつき、資金調達もしやすくなるでしょう。日本でも新しいテクノロジーがどんどん生まれてくるようになるかも。

☆【参考】DMM、秋葉原にハードウェアスタートアップの聖地となるシェアスペースを開設

ということで、思いつくかぎりを書いてみました。当然ながらポジティブなこともネガティブなこともありますが、こう見ると人々の細分化と分断化がキーワードですね。国政側からみれば人々の統率が難しくなるわけで、国による規制なんかも強まってくるかもしれません。

何はともあれ、我々は時代が大きく変わりつつある過渡期にいるわけで、そんな状況を体験できるだけでもとてもエキサイティングなことです。レッツ・ハブ・ア・ファン・トゥギャザー。

 

『堀川大樹メールマガジン「むしマガ」』Vol.271 2015/01/04

著者/堀川大樹(クマムシ研究者)
北海道大学大学院で博士号を取得後、2008年から2010年までNASAエームズ研究所にてクマムシの宇宙生物学研究に従事。真空でも死なないクマムシの生態を解き明かしたことで、一躍有名研究者に。2011年からはパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所に所属。著書に『クマムシ博士の「最強生物学」講座』(新潮社)。人気ブログ「むしブロ」では主にライフサイエンスの話題を提供中。
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