迫る中国企業。なぜ「モノづくり大国」ニッポンは凋落したのか?

 

ところがバブル経済崩壊後の90年代後半から様子がおかしくなった。多分、多くの企業はいつでもかつてのように良質で廉価な商品を作れると自信を持っていたが、日本が油断をしている隙に韓国台湾東南アジア諸国や中国がどんどん力をつけ日本のライバルに成長してきていたのだ。いまや労賃などのコストは新興国の方がずっと安いし、商品も日本品を研究してひけをとらないものを作るようになっているのである。

しかもアメリカ、EU、北欧などの先進国は第5世代(5G)の先端通信機器を次々と考案し、新産業革命ともいうべき新しい工業製品を作り始めた。その間、日本は5Gと産業の融合に遅れをとり、特に中国企業がメキメキと力を伸ばして日本の市場を浸蝕しているのが実情だ。

国も企業も個人も余裕が出てくると、かつてのような熱気を失い油断してしまうのが常だ。今の日本はそうしたどつぼに落ち込んでしまったのだろうか。安倍首相は世界各国を廻り、外交面では評判がよい。しかし、日本の技術環境留学生研究開発とその論文等の分野ではどんどん国際的地位が低下している現実もあるのだ。少し大げさにいえば、工業大国として岐路に立っているのかもしれない。

(電気新聞 2019年4月8日)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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