二代目、三代目と引き継がれていく企業の中には、事業継承がうまくいかないケースも数多あると耳にします。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、事業承継のための極意を公開。とある優秀な経営者の方のケースを詳しく紹介し、優れた施策を解説しています
うまく事業承継をする方法
私の知っているスポーツショップでも、二代目に引き継がれるお店が増えてきました。二代目は30代、40代が多いですね。それも親子でバトンタッチというケースが目立ちます。
その引継ぎがうまくいっているお店もあれば、いろいろと問題に当たるお店もあります。経営を引き継ぐ方も、引き継がせる方も大変です。
肉親同士での引継ぎは、お互いに考え方や方法が「分かっているだろう」と思ってしまいます。ですから、往々にして必要なことを伝えないままに経営を引き継いでしまうことが多いのです。
これはよくありません。トラブルのもとです。とはいえ、肉親同士ですから、時間が経てば理解し合えることも多いと思われます。
では、この経営の引継ぎが肉親ではなく社員の場合はどうでしょう。つまり、創業者やその後継ぎが社員に事業を引き継ぐ場合です。大企業は社員が引き継ぐ場合が多いですが、中小零細企業ではそういうケースはあまり見かけません。その稀な事例について、当事者である経営者からお話を聞くことができました。
ご紹介する会社は、あなたのお店と規模も業態も大きな差はありません。ですから、きっと参考になるのではないかと思います。
何を引き継ぐか
この会社の経営者は、そろそろ事業承継をする時期だと考えました。しかも、肉親や親族ではなく、社員に引き継ぐことに決めたのです。そのためには、事業承継の準備をしなくてはなりません。どんなことをしたのでしょうか。
最初に、後継者を決める必要があります。これと思う候補者に話をしましたが、そうは簡単にうけてはもらえません。そりゃそうです。経営者と雇用者とでは、まったく責任の重さが違います。
それでも、時間をかけて説得を続け、何とかその気になってもらいました。それでも、その社員には不安な気持ちがあります。そこで、経営者は後継者候補を含んだ何人かの社員で事業承継のためのプロジェクトを組むことにしました。
このプロジェクトにはいくつかのミッションがありましたがまずは「事業承継の合意書」を作ることです。その内容は詳しくは言えませんが、事業承継後の後継者の待遇を明確にして、安心して引き継げるようにしました。
また、後継者にとっては、会社の負債を引き継ぐことは大きな負担です。経営者は、引継ぎ時点までに負債をなくしておかなければなりません。さらに、自社株の引継ぎは、けっこう厄介な問題です。その方法も「合意書」で明確にしておきます。
引き継ぐ資産は、商品や不動産や従業員など形のあるものばかりではありません。経営手法やマーケティングノウハウなど形のない資産もあります。この形のない資産については、少なくとも「企業理念」だけは引き継いでもらうことにしました。
その他の形のない資産は新しい経営者が築いていけばいいと、現在の経営者は考えています。とはいえ、これまでの中期経営計画は経営者と後継者と一緒になって作ってきましたからおのずと形のない資産も引き継がれることになるでしょう。