二刀流という稀有な才能を発揮し、現在アメリカのメジャーリーグで大活躍している大谷翔平選手。彼の成功はもちろん本人の努力の賜物ですが、良き指導者に恵まれたという面も大きいのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、日本ハムファイターズ時代の指導者である栗山英樹監督が、どのような考えのもと、才能あふれる選手と接し育ててきたのかを紹介しています。
大谷翔平を育てた「独創的」若手育成術
大谷翔平、清宮幸太郎ら若手選手の育成に定評のある日本ハムファイターズの栗山英樹監督は、どのようにして選手を育てているのか。「人を育てる名将」の考え方を紹介します。
運と徳 日本ハムファイターズ監督 栗山英樹
僕が特別に何かをしたから彼(大谷翔平=ロサンゼルス・エンゼルス所属)が育ったというわけではありません。ただ、僕が意識したのは前例がどうだとか、野球とはこういうものだとかいう先入観をいかに自分自身が払拭できるかということでした。
真白な感覚で大谷翔平という選手を見た時に、投手としても打者としても絶対に世界に通用することは確かでした。
僕如きが自分の感覚で彼の可能性を閉ざすようなことがあってはいけない、決められるのは野球の神様だけだと思ったものですから、技術的なことはほとんど翔平に任せて、僕と球団のゼネラルマネジャー(GM)は、それを削いでしまうような要因を排除することに力を入れました。
翔平を見ていて僕らも勉強になったのは、野球も結局は人間がやるものだということでした。人間として駄目な部分は誰が見ても駄目なわけですし、反対に欠点を改めて人間として成長していけば、野球選手としても成長していく。その手本を示してくれたのが翔平だったんです。
翔平には「野球が上手くなりたい。そのためには何でもやります」というはっきりしたスタンスがありましたから、人間学の教えを含めて彼の成長のために我われはやれる限りのことをしました。
だからといって何かを無理強いしたことはありません。うちのチームの特徴として、必要以上に何かを教えたりすることはしないんですね。普段は黙って練習や試合を見ていて、何かを聞かれた時に「こういう方向がいいんじゃないか」と教える。
翔平をはじめ選手たちの成長を見ていると、この指導の方向で間違ってはいなかったという感覚を抱きました。だから、その分、僕たち指導者の勉強が欠かせないんです。選手たちよりも十倍は勉強しないと彼らの成長に追いつかないし、人間的に成長させてあげることができない。
指導者としての僕の課題は自分が人間として大きくなることだと思っていますので、だからこそ過去1,000年、2,000年の間、様々な苦しみを味わいそれを乗り越えてきた先人たちの教えにも積極的に学んでいるわけです。