理想のコミュニティ。なぜ、徳島県海部町は自殺率が低いのか?

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人の価値観もライフスタイルも多様化している現代においては、かつてのようなコミュニティを作ることは難しいと考えられています。しかし人間はまったくの孤独では生きてゆけないのも事実。その折り合いはどうつければいいのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、お互いが助け合い、かつ自殺率が突出して低い国内のとある地域を紹介し、「私たちが目指す都市型コミュニティのモデル」と絶賛しています。

都市型コミュニティのモデルが地方の小さな町にあった!

こんにちは!廣田信子です。

マンションのコミュニティが大切だと言っても、人の価値観もライフスタイルも多様化しています。昔のコミュニティに戻るでもなく、これまでのコミュニティの形にこだわるのでもなく、今の都市生活にふさわしいコミュニティ像が必要になってきます。

普段はベタベタした関係ではないけど、いざというときには、当たり前に、助けを求められ、当たり前に、助ける…その安心をベースに、普段は、それぞれが自分らしく生きられている。価値観はそれぞれ違ってよくて、でも、方針を決めなくてはいけないときは、お互いを理解し合うことで、しこりを残さず最後は結論を出していける。

そんなコミュニティのモデルはないか、ずっと探していました。

そうしたら、数年前、意外にも地方にすてきな町を見つけました。その町は、全国的に見て、特出して自殺率が低いことで注目されていました。徳島県の海部町(旧)という町です。

一見、人間関係が濃い地域の方が、孤独にならないので、自殺率が低いのではないかと思いがちですが、実はそうでも無いのです。人間関係があまり濃密な地域は、すぐに話が広がる不安もあり逆に、なかなか心を割って話せないのです。

海部町には、「市に出せ」と言う格言が伝わっています。悩みはひとりで抱え込まず、周りの人に開示して助けを求めよ…と言うものです。ですから、ここでは他人に助けを求めることへの抵抗感が低く、例えば、「がん」になっても、「うつ」になっても、周りに隠しません。みんなで悩みを共有してサポートするのが当たり前の文化があるのです。だから、自殺が少ないのです。

でも、悩みや困りごとをコミュニティの中で開示するというのは、意外に難しいことですよね。近い関係ほど、弱みを見せたくない、迷惑をかけたくないと言う心理が働き、1人で悩みを抱え込んでしまいがちです。

なぜ海部町の人たちは周りに助けを求められるのでしょうか。

そのことを研究した学者の方のレポートによると、海部町にはいくつかの特徴があります。まずコミュニティのつながりが緩やかだということです。町民の近所付き合いは、「立ち話程度」「挨拶程度」が圧倒的に多いのです。いわゆる農村の「村」社会とはちょっと違うのです。

その背景は…海部町は、木材の集積地だったこともあって、江戸時代から移住者が多かったため異質なものを受け入れる風土が育っていました。ですから、今でもコミュニティは開放的で義務を強制するような空気がなく、人の批判もしません。

また、主体的に政治参加し「自分には政治を変える力があると感じている人がとても多いというアンケート結果があります。ですから、コミュニティの方針を決めるための議論も非常に活発です。いろいろな人が集まっているからこそ、話し合いの文化が育ったのだと思います。

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