経営者は従業員に対して労働条件を明示することが必須ですが、労働基準法による取り決めを理解していないと、大きなトラブルのもとにもなりかねません。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、労働条件を明示するにあたって使用者側が注意すべきポイントを解説しています。
御社では、労働条件の明示を適切に行っていますか?
労基法15条には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定められています。明示方法については、施行規則によって「書面の交付」によって行うこととされていました。
これが、施行規則の改正により、この4月から書面の交付だけでなく、従業員が希望した場合には、FAXやメール、LINE等でも明示できるようになりました。ただし、従業員のブログ等、第三者に閲覧させることを目的としているものへの書き込みによる明示は認められていません。また、印刷や保存がしやすいよう、PDF等の添付ファイルで送ることが望ましいとされています。
FAXやメール等での労働条件の明示は、あくまで、従業員が希望した場合に限ります。従業員が希望していないのに、FAXやメールで労働条件を明示した場合、労働基準関係法令違反となります。
労働条件の明示は、正社員などの期間の定めがない働き方の場合、雇入れ時に行えばOKです。労働条件が変わるごとに明示し直す必要はありません。期間の定めがある働き方の場合には、契約更新ごとに明示が必要です。出向に際しても、労働条件の明示義務があります。
また、労基法15条には「明示された労働条件が真実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」と定められています。ですから、明示された労働条件と実際の働き方が違う場合、従業員は即時に辞めることができます。この場合に、従業員が就職のために引っ越しを行っていて、辞めてから14日以内に帰郷する場合には、そのために必要な旅費を会社が負担しなければなりません。これは、交通費はもちろん、途中の食費や宿泊費も含みます。家財道具等の運送費も含みます。同居の家族がいた場合には、彼らの旅費も負担しなければなりません。会社にとっては、大きな負担となるでしょう。
そもそも、労働条件の明示は、労働条件を明確にすることで従業員とのトラブルを防ぐことが目的です。明示方法だけでなく、明示内容についても十分注意を払い、雇入れた従業員に気持ちよく働いてもらえるようにしていきましょう。
以上を踏まえて、改めてお聞きします。
「御社では、労働条件の明示を適切に行っていますか?」
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