店舗経営を支えるため日夜奔走する飲食店コンサルタントの中西敏弘さんは、売上アップなど具体的な取り組み支援の前に必ずあることを実践するそうです。今回中西さんは自身の無料メルマガ『飲食店経営塾』でその「あること」を明かすとともに、驚きの効用についても記しています。
理念・クレドを現場に浸透させる一番の方法とは?
僕がご支援先でコンサルティングを開始する際には、必ず、方針書を作成し、会社の「あり方」を明確にしてもらいます。そして、この「あり方」を皆に浸透させながら、様々な取り組み(売上を上げるための行動、学びなど)をやってもらうようにしています。
その中で、一番最初にどこの会社にも課すことが、「理念・クレドの暗記」と「毎日の朝礼での唱和」です。
「理念はあっても、店でなかなか浸透しない」という悩みを抱えられている経営者さんは多いですが、それは理念に“触れさせる”機会が少ないことが一番の問題。
また、理念が浸透している状態というのは、「理念を理解し、店舗で各自が理念に基づいた行動できている状態」なのですが、まず、理念を覚えていないと、普段、理念に基づく行動などできるはずがありません。
実は、「理念の暗記」と「朝礼での唱和」を多くの会社で義務付けてもらうのですが、この行動で“不思議な結果がでたことがあります。
その会社は、店舗が3店舗ありました。同じように、「理念の暗記」と「朝礼での唱和」を課題にしました。A店は、3日以内に社員スタッフ全員(5人ぐらい)が理念を暗記(理念とクレドをともに暗記してもらったので、A4一枚、約300字ぐらいの量がありましたが…)し、そして、朝礼の唱和もしっかりとやり始めました。B店は、なかなか暗記ができず、暗記するまでに約1ヶ月ぐらいかかり、その後、ようやく朝礼も始めました。C店は、「そんなこと別にやらなくても…」「そんな面倒な事やりたくない…」とは言いませんが、誰も暗記しようとせず、朝礼も実施することはありませんでした。
すると、3ヶ月後、変化がでました。A店は、特に新しい取り組みをやり始めたわけではないのですが、急に売上が上がり始めたのです。B店は、何も変化ありません。C店は、社員スタッフが退職を望み、その後、もう一人もその3ケ月後、退職することになりました。もちろん、売上は上がるはずがありません(これは僕がご支援先に入ると、よく起こる現象です)。
この3店の変化に僕はすごくびっくりしました。A店は、本当に何も新しい取り組みをしていないのに、売上が向上したことは僕にとっても不思議な体験でした。
想像するに、その会社の理念・クレドには、お客様に対する姿勢や仕事の考え方、商品に対する姿勢などが記載されているのですが、これを毎日唱和することによって、無意識にお客様視点での行動や商品に対する姿勢などが、浸透していったことが、店の質を徐々にあげ、それがお客様満足度に繋がり、売上アップに至ったのではないかと。
この件以来、どのご支援先に行っても、この体験談を話すとともに、基本的には「理念の暗記」と「毎日の朝礼での唱和」をするようにお願いしていますが、これを確実に実行している会社は、確実に売上が上がっています(たまに、これをやって頂けない会社があるのですが、結果は…です)。
店のスタッフにとっては、暗記したり、唱和したりすることは、本当に面倒な事、嫌な事だと思います。こんなことより、「もっと売上が上がる対策を教えてくれよ」という声が、たまに聞こえてきますが、基本的な会社の考え、仕事の考え、お客様に対しての考えを理解せず、“上辺だけ行動”しても、一時は売上が上がっても、持続することは難しいでしょう。
なぜなら、「心がこもっていないこと」がお客様に伝わるからではないでしょうか?
理念やクレドの大切さを最も認識しているのは、経営者さんでしょう。しかし、店のスタッフの反発を招くのを嫌い、暗記させたり、唱和させたりすることを嫌がる方もいらっしゃいます。
でも、永続的に店の売上をアップさせ、会社を成長させたいのであれば、会社の軸となる「考え」を皆で共有していないと、きっと、売上が上がったとしても一時的でしょうし、チームワームを保つのも難しいでしょう。
理念・クレドの浸透で悩んでいる方は、まずは、このアナログ的な「暗記」「唱和」から始めてみてはいかがでしょうか?
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