読売だけが「忖度」報道。年金20%減の公表を各紙はどう報じたか

 

マクロ経済スライドの機能強化?

読売】は1面トップに2面関連記事、3面解説記事「スキャナー」と社説、4面政治面、15面特集と《朝日》同様全面展開。見出しは「年金 現役収入の8割維持」「順調成長なら 47年度以降も」(以上、1面)、「年金『担い手改革へ』」「75歳開始 選択可能に」「パートに適用拡大 高齢者就労」「将来世代の給付 目減り」(以上、3面記事)、「安定運営のため不断の改革を」(3面社説)、「年金財政検証 野党反発」「成長率など 前提『バラ色』問題視」(以上、4面)。

社説子は「年金制度を安定的に将来世代に引き継ぐには、さらなる改革が欠かせない」と言い切る《読売》は、このままではいけないと言っていることになる。

必要な「改革」として語られているのは、非正規雇用の厚生年金編入であるとか、支給開始年齢を75歳にできるようにすることなど、《朝日》同様で、既に語られていることがほとんどだが、1つだけ、際立った主張は「マクロ経済スライドの機能強化」だ。内容は不分明だが、賃金上昇にもかかわらず、年金水準を落としていく現在のマクロスライドをさらに給付抑制方向に強化するというのは穏やかではない

想定は甘すぎる

毎日】は1面トップに3面の解説記事「クローズアップ」、5面に関連記事と社説、7面に特集。見出しは「年金水準2割減」「28年後 現役収入の5割に」(以上、1面)、「『現役の5割』年金綱渡り」「経済次第 甘い想定」「支え手増に負担の壁」「単身女性の貧困 懸念」(以上、3面)、「政府『年金』幕引き図る」「2,000万円問題 野党は追及継続」(以上、5面記事)、「年金財政の検証 見通しに甘ささはないのか」(5面社説)。

5面社説は、「見通しに甘さはないのか」と問いかけている。6つのケースのうち、「中間的なケース」(上から3番目)では給付水準は50%を確保できるということになるが、この想定の前提は妥当なものか、検討している。このケースは「実質賃金上昇率を1.1%としているが、17年度までの4カ年の平均はマイナス0.6パーセント」。さらに、これは安倍政権が経済再生に注力した結果出てきた数字。これを大幅に上回る数字を前提に置くのは妥当なのだろうかと疑問を呈している。「中間的」というが、実際はあり得ないほどのバラ色の想定ではないのか、ということだ。さらに、検証に加わった有識者の1人は「代替率は50%を下回る可能性が高い」と語っているという。

年金財政を底上げするために提案されているのが「非正規の厚生年金加入」という点で、《朝日》、《読売》とも共通する。

現受給者の生活を支える必要

東京】は1面トップに2面の解説記事「核心」、7面関連記事、5面に社説。見出しは「年金水準 28年後2割弱減」「財政検証 現役収入に比べ」(以上、1面)、「楽観試算で『100年安心』」「給付抑制 20年以上が前提」「『公表遅れは選挙対策』野党が批判」(以上、2面)、「安心の底上げを図れ」(5面社説)、「年金 若年層ほど低水準」「受給後年々目減り40%台も」「66歳まで働き続ける必要」「在職老齢年金縮小なら 支給額2040年度2,200億円増」(以上、7面)。

社説は、この検証結果について、政府からすれば「とりあえず大丈夫」だろうが、その意味は「年金額の目減りと引き換えに制度を持続できるという見通し」と言っている。さらに、実際の経済状況は想定とは食い違うから、これは飽くまで「将来を考える目安にすぎないのだ、とも。

問題は、制度を維持する仕組みにあるという社説子。マクロ経済スライドのことを言っているのだが、この方向にかじを切った政府は、今後30年間抑制を続けないと制度を維持できないことになるとする。《東京》は「抑制の仕組みは将来世代の年金財源を確保するためには致し方ない」としつつ、「受給者の生活はとても『100年安心とは言い難い」とも。

また、年金水準引き上げのための制度改革については他紙と同様だが、大きく違っているのは「受給している高齢者の生活をどう支えるかも忘れてはならない」としている点だ。マクロ経済スライドの残酷さを思えば、この指摘は重要。社説全体を、このトーンが覆っているのが、《東京》の特徴。

image by: MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 uttiiの電子版ウォッチ DELUXE 』

【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

print
いま読まれてます

  • 読売だけが「忖度」報道。年金20%減の公表を各紙はどう報じたか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け