もっと言えば、「計画運休」というのは「計画的に鉄道が運休する」だけでなく、社会全体が「鉄道運休に備えて計画的に行動する」ためのもの、そのような理解、発想が必要です。
この発想であれば、今回の計画運休の発表は24時間前でも、48時間前でもダメです。9月9日の出勤時刻・登校時刻にかかるような輸送障害を予想しているのであれば、その発表は「9月6日の金曜日、その午後イチ」がタイムリミットであったはずです。
反対にこのタイムリミットまでに決断して発表ができれば、多くの事業所と学校は、平日の定時の時間内に余裕を持って意思決定会議を行って9月9日の月曜日の休業が決定できたはずです。
同じように、運転開始時刻を午前8時としたのも不適切だと思います。迷惑を最低限にしたいし、その努力をすれば理解されるだろうという気持ちが判断の裏にはあったのでしょうが、甘いと言わざるを得ません。「午前8時」というのは、「多少の遅刻を許容すれば会社にも学校にも行ける時間」という極めて曖昧な時刻です。そんな発表をすれば会社も学校も、そして利用者個人も、「頑張って行こう」ということになりかねない中途半端な時間だからです。
ですから、結論としては、今後同じような曜日に同じようなコースが予想される台風が接近したとしたら、前週の金曜日の午後イチに「月曜日は12時まで運休」といった発表をすべきだと思います。
勿論、リスクは伴います。今回の15号の場合、6日の金曜日の時点では上陸の地点は東海から関東の幅広いエリアの可能性があり、絞り込みはできていませんでした。また9日の12時などという大胆な運休をして、仮に被害が軽微であった場合には批判が来るのは明らかです。
それでいいのです。空振りになっても、それで猛暑の中、津田沼駅などで大行列をさせるという個人にとっても社会にとっても無駄な不幸を回避できれば、それでいいのです。
成田が陸の孤島になったという大問題もありますが、これも鉄道と空港運営会社の協議、更には世界中のキャリアとの協議という問題があり、もっともっと早めに運休が具体的に決定できれば対策の方法もあると思います。
最近、計画運休では実績のある関西の鉄道関係者に話を伺うことがあったのですが、その方は「首都圏は輸送量が桁違いであるし、ネットワーク上の問題として山手線に過剰な負荷があるとか、相互直通が多すぎて大変だという条件の悪さ」があるとしながらも、関東でも「ホンモノの計画運休が理解を得るようになってほしい」と真剣に語っておられました。
とにかく「緻密に計画して、前倒しで発表することでリスクを最小化する」ということが「できない」というのは文明のレベルが未発達であるということです。「実際に台風が来ないと判断できない」とか「空振りになると批判が出る」というのはとにかく社会として幼稚なのです。
ですから、これはJR東日本さんだけの問題ではなく、東京という都会がいかに幼稚で低スキルの街なのかということなのですが、とにかく今回の失態を教訓として、ホンモノの計画運休を定着させていっていただきたいと思います。
クソ真面目に「できるだけ精度の高い判断をして、利用者の不便を最小化したい」という発想ではダメなのです。そうではなくて前倒しの判断と発表で、相手つまり利用者サイドの判断をし易くする、これが計画運休のキモです。「月曜日の休業・休校を判断させる」というところから逆算して決定、発表する、そのような発想の転換を強く求めたいと思います。
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