千葉県をはじめとする関東沿岸部に甚大な被害をもたらした、台風15号。長引く停電に多くの方が苦しんでおり、1日も早い復旧を願わずにはいられません。そして先々週、アメリカでも大型ハリケーンが接近、通過していたのをご存しでしょうか?その進路に関し、トランプ大統領が「誤報ツイート」を発信し、それを隠蔽、正当化しようとして大問題となっています。健康社会学者で気象予報士でもある河合薫さんが、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、その顛末を紹介。「絶対感」に酔いしれる権力者の恐ろしさについて述べ、警鐘を鳴らしています。
禁じ手に出たトランプ大統領
全くもって信じられない事態が起こりました。な、なんとトランプ大統領が、勝手に、ハリケーンをアラバマ州に上陸させてしまったのです。
ハリケーンの名は「ドリアン」。なんだかものすごい香りがしてきそうなネーミングですが、超大型のハリケーン「ドリアン」は、5日バハマに壊滅的な被害をもたらし、少なくとも30人が犠牲になりました。
勢力を保ったまま米東岸沿いを北上し、カナダ東部ハリファクス近郊に7日夜(日本時間8日午前)、上陸。強風と豪雨を伴い、ハリファクス中心部では建設中の集合住宅に巨大なクレーンが倒壊する事故が起きたとされています。
その「ドリアン」についてトランプ大統領は1日、自らのツイッターで「アラバマ州も『ドリアン』の影響を受ける可能性が最も高い」と発表したのです。
ところがその20分後、米国立気象局(NHS)が、「アラバマはドリアンの影響は受けない。進路ははるか東方である」と間違いを指摘するツイートを発信。トランプ大統領に批判が相次ぎました。
ここで終われば良かったのですが、自分を正当化するためにはどんな手でも使うのが“トランプ流”です。4日の記者会見でトランプ大統領は、米海洋大気庁(NOAA)が先月29日に作成したハリケーン「ドリアン」の進路予想図に、明らかに手書きでアラバマ州の上に予報円が書き加えられたものを用い、「当初の予想ではフロリダ州を直撃するとみられていた。他の多くの州にも影響を与える可能性があった」と、自らのツイートの「正当性」を強調したのです。
これが火に油をそそぐことになり、ツイッターでは「油性ペン」という言葉がトレンドワードに。さらに米NBCのお天気キャスターが、誤った天気予報を伝えた場合罰金か90日以下の禁錮刑、またはその両方が科される可能性があるという米国の法律を紹介しました。
この高まる批判に対し、トランプ氏はさらに信じられない手段を行使。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は9日、ロス商務長官が海洋大気局(NOAA)幹部に対し、トランプ大統領の主張と矛盾する気象予報の撤回を迫ったと報じました。
報道によれば、ロス長官は6日出張先のギリシャからジェイコブズNOAA長官代行に電話をかけ、大統領の説明との矛盾の解消を指示。ジェイコブズ氏が異議を唱えたところ、状況が変わらなければ同氏を含む政治任用の幹部らを更迭すると告げたとされています。……もし、これが事実なら…開いた口がふさがりません。