日本では気象予報士の資格があれば、独自の予想を出すことが許されていますが、台風予報は別。一般向け予報の場合、台風に関しては気象庁の台風情報の範囲内での解説にとどめ、独自の予報などを提供することは禁じられています。
理由はシンプル。いわずもがな台風は命の危険など甚大な被害をもたらす極めて危険な気象現象です。その予想が、テレビ局や気象予報士によって異なっていたら、一般の人たちは「どれを信じればいいのか?」とわからなくなる。
本当であれば「避難すべき地域」の人たちが、「〇〇の予報はこっちにはこないから大丈夫だよ!」なんてことになれば、助かる命に危険がおよぶことにもなりかねません。
また、台風などの予報は「もう大丈夫ですよ」と安心させることも極めて大切です。「気象庁は大丈夫っていってるけど、〇〇は危険って言ってるから電車の運行を停止しよう」なんて事態になると、市民生活に大きな混乱を与えます。
たとえ大統領であっても、台風予報は専門家に任せなくてはならない。どんなに権力があっても、予報に関わってはいけないのです。なのにトランプ大統領は間違ったツイートをした上に、その間違いを認めるのではなく、自分への批判を収めるためにNOAAに圧力をかけた。
権力がもたらす「絶対感」に酔いしれた権力者は、実に身勝手で無礼で、倫理にもとる行動をとり、リスクの高いおバカな行動や決断をするようになるのですが、今回のトランプ大統領の愚行は明らかに禁じ手であり、たとえ「直接的な被害がなかった」としても許される行為ではありません。
絶対感が極めて危険な心理であることは、世界中の研究者の一致した見解です。例えば「約束の時間に遅れそうだからスピード違反でクルマを走らせる」という行為について、「絶対感の高い」グループと「絶対感が高くない」グループに分けて評価をさせると、絶対感の高いグループに属する人たちの多くが、「自分がスピード違反する行為」を「仕方がない」と回答することがわかりました。
その一方で、同じ行為を他者がやったときには「法律に違反するなど許せない行為だ!」と厳しく非難。なんとも身勝手な話ですが、絶対感は「共感性」をはてしなく低下させてしまうのです。
また、絶対感は「情報を処理する能力を著しく短絡的にする」という困った思考メカニズムを強めることも明かされています。思考が短絡化した人は、理詰めで正しい答えを熟慮する過程を経ず自分の直感で物事を判断します。そのためどんなにリスクの高い決断でも、驚くほど楽観的!絶対感は「自分は極めて有能で特別な人間である」という自己イメージを増幅させるため、本人は「スッバらしい決断!こんなことオレ様しかできねーぜ!」とマジで信じ込んでいるのです。
自分の決断に反するものは「フェイクニュース」と断罪し、一部の都合のいい情報だけをチェリーピッキングし、巧みに自己を正当化する。これまでもトランプ大統領の言動には驚かされてきましたが、他国の大統領を批判するのは申し訳ないけど、こんな人が「核ボタン」を持ち歩いてると考えると、ゾッとします。
みなさんのご意見、おきかせください。
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