【書評】「あれは民主化運動ではない」元中国人が語る天安門事件

 

習近平は憲法まで改正して、終身独裁の道を歩み始めた。「習近平新時代中国特色社会主義思想」なる思想を憲法に盛り込み、国家や国民をすべて習近平のイデオロギーで染めようとしている。毛沢東時代以上の統制で、言論をほぼ完全に封殺し、メディアは“大本営発表”以外は報道しない。

安田 「この習近平思想が何なのかというと、具体的に特に中身はない。一番分かりやすい説明は『習近平に怒られないようにふるまいなさい』です」

これはジョークだそうだが、的を射ている。

石平 「晩年の毛沢東は、いかに自分の権力を守るかを焦点に政策を講じていました。政策を間違っても続けていくという毛沢東時代末期の落とし穴に、習近平は既に半分くらい入っています」

習近平の一つのアキレス腱は、自分の名を冠した思想を憲法に盛り込んだものの、毛沢東・トウ小平といった「偉大な指導者」と呼べるような業績が何もないことだ。だから彼は歴史的業績がほしい。もし、台湾が習近平の手によって統一されれば、毛沢東もトウ小平も超えることになる。今後、国民の不平不満は高まるだろう。しかし、台湾を併合すればそれは一気に吹っ飛ばされる。

そうなると党内のあらゆる反対勢力は完全に沈黙するから、彼の終身独裁は当然、という話になりかねない。安田が台湾併合は低確率ではないかというと、石平は「いや、やるやる。彼にはそういう気質、高級幹部の子弟ならではの下品なやくざ気質があります。いざとなると怖いもの知らずです」と返す。安田はあっさり「そうですね。体制が多少動揺してからのほうが、権力維持のためにそういう危ない賭けをやりそうで、恐ろしい」と応じるんだから調子がいい。

中国がこれから5年も10年も、今よりよくなるという保証はどこにもない。むしろ今がピークで、経済も社会状況も崩れていく可能性が大きいはずだ。中国政治は、またいつか来た道に戻ってしまう。それが今の中国が直面している問題である。正直、今後中国がどうなるか、自分には分からないという二人だ。

中国はいずれ穏やかな民主主義国家になるのではないか、そういう希望を持っている石平だが、「個人的には中国共産党政権は絶対に信用しません。特に習近平政権は、中国および中国人民を地獄に導く可能性が高いとわたしは見ています」と厳しく断じる。また、「一つの結論を出すとするなら、結局、中国人民は自分たちの運命を一人の手に委ねることを好むのです」そうなんだ~。

この対談は、こう終わる。

石平 「最近、冗談半分に『習近平、もっとやれ』と言ってます。習近平があと5年、10年と続けてくれれば、中国共産党の政権は崩壊するのではないか」

安田 「確かに。習近平はろくなやつではありません」

石平 「そういう意味では、私は習近平政治を評価しているんです。『彼ならやってくれる。いつか中国共産党をつぶしてくれる』と、期待しているんですよ(笑)」

……石平の精神の動揺が垣間見られる対談であった。

編集長 柴田忠男

image by: Wangkun Jia / Shutterstock.com

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