日々大勢の市民が声を上げる韓国のデモ。国家政策を即受け入れることはせず、一旦は「とりさげを要求」する韓国デモのスタイルが確立されたきっかけは、どこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴31年になる日本人著者が、言い伝えや韓国大統領選挙制度の成立ちからデモのエナジー源を探っています。
クールコリア(デモ文化)
乞うご期待などと書いた前々回(「『玉ねぎ男』は絶対に許さない。韓国市民のクールなデモの繋ぎ方」)だった。約束は守る。今回は韓国のデモ文化についてである。韓国のこのデモ文化。これはクールだ。なぜデモがクールなのか。市民が全員で力を合わせて国の姿をちょっとでもよくしようと団結するのがデモだから。日本にはほぼ見られないクールな姿だ。
デモの話を書くには、その源流というものをあげないといけない。源流は、たぶん、朝鮮時代(あるいはその前から)の「コドゥオ ジュシ オプソソ」に辿り着くんだと思う。
筆者の第一エッセイ集『おしょうしな韓国』にも書いたことなんだけど、この「コドゥオ ジュシ オプソソ」。意味は「とりさげてください」という義。
王様がある方針を出す。それは民衆にはあまりにも厳しくかつ民衆に受け入れがたいものだとしよう。このようなときに、王をとりまく国の官僚(ヤンバン)たちが、王のいる建物の前の広場に列を作って座り込み、一晩中「コドゥオ ジュシ オプソソ」「コドゥオ ジュシ オプソソ」といいながら、王のその政策をやめさせようとする。
すると、王は、一人自分の部屋で彼らの声を遠くに聞きながら考える。これほどまでにやつらは「やめよ」というのか。そんなにこの政策がだめなのか。しかし王とて、自分なりに考え抜いて出した方針だけにそう簡単には「取りやめる」とは言えない。朝方、それでもヤンバンたちの王のやり方をたしなめようとする声がやまず続いている。おもむろに王は出てきて、「わかった」という。
そんな時代劇がこれまでに韓国のテレビの中に何度も出てきている。王に逆らう意見を部下が言うのである。
日本ならどうか。天皇の意見に逆らえるだろうか。あるいはサムライ時代に、徳川家康の方針に部下が反対意見を述べることができたろうか。たぶん、否だ。
日本は受け入れる文化。韓国は王にでも逆らう文化(それが理に叶わぬときは)。そしてこの伝統が今に受け継がれているのが、きょう日、毎日テレビを賑わしている100万単位のデモ隊なんだと筆者は考えている。日本の人口の半分にも満たないこちらの国民が、100万単位でデモをするのである。主張はそれぞれいろいろあるけれど、主張がなんであれ、このデモのエナジーはただ見ているだけでも爽快であり、あっぱれである。
この100万単位のデモがきょう日急に発生したのではなく、これも源流がある。古くは上述のように「コドゥオ ジュシ オプソソ」であるが、現在に直で関係するのは、大統領選挙などに関して繰り広げられた一連の流れがある。大統領選に関する内容がメインとなるので、まずは大統領の系譜について書いてみる。
- 1~3代:イ・スンマン(李承晩)*在任期間:1948~1960年
選出方法:1代:制憲国会議員による間接選挙で選出。2~3代:直接選挙で選出 - 4代:ユン・ボソン(尹?善)*在任期間:1960~1962年
選出方法:国会にて間接選挙で選出 - 5~9代:バク・ジョンヒ(朴正煕)*在任期間:1963~1979年
選出方法:5~7代:直接選挙で選出。 8~9代:統一主体国民会議にて間接選挙で選出 - 10代:チェ・ギュハ(崔圭夏)*在任期間:1979~1980年
選出方法:統一主体国民会議にて間接選挙で選出 - 11~12代:ジョン・ドゥファン(全斗煥)*在任期間:1980~1988年
選出方法:11~12代 : 統一主体国民会議にて間接選挙で選出。 - 13代:ノ・テウ(盧泰愚)*在任期間:1988~1993年
選出方法:直接選挙で選出 - 14代:キム・ヨンサム(金泳三)*在任期間:1993~1998年
選出方法 直接選挙で選出 - 15代:キム・デジュン(金大中)*在任期間:1998~2003年
選出方法:直接選挙で選出 - 16代:ノ・ムヒョン(盧武鉉)*在任期間:2003~2008年
選出方法:直接選挙で選出 - 17代:イ・ミョンバク(李明博)*在任期間:2008~2013年
選出方法:直接選挙で選出 - 18代:バク・クネ(朴槿惠)*在任期間:2013~2017年
選出方法:直接選挙で選出 - 19代:ムン・ジェイン(文在寅)*在任期間:2017~2022年(現在)
選出方法:直接選挙で選出
以上、大統領の在任期間や選挙の方法などについてあげてみた。ちなみに筆者の書くものに韓国の大統領のことが出てくる可能性はかなりある。読者の方々にも韓国の歴史として、大統領のリストを一度見ておくこともある意味、勉強にもなろうかと思う次第だ。