諦めろ日本。「団塊ジュニア」の出産ラッシュ終了で少子化急加速

2019.10.17
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先日、2019年の出生数が、予定より2年も早く90万人割れする見通し、と報道されました。若年層の「未婚化」が加速するなか未だに経済成長を追い求める日本の姿に、メルマガ『虚構新聞友の会会報』の発行者で虚構新聞の社主UKさんが、かつて栄華を極め、その後衰退したイギリスの事例を紐解きながら「余計なプライドを捨てよ」と述べています。

もう後がない状態から出産を始めた「団塊ジュニア」

「日経新聞」などの報道によると、今年2019年の出生数は90万人を割ることがほぼ確実になったそうです。

▼出生数90万人割れへ19年、推計より2年早く
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50672490W9A001C1MM8000/

記事によると「団塊ジュニア世代が40代後半になり出産期の女性が減ったことが大きい」そうで、2016年に100万人を割ってから、たった3年でさらに10万人減らしました。このペースで減少が続けば、2046年には日本人が一人も生まれなくなる異常事態です。

上記記事について、少子高齢化を専門にする公益財団法人中部圏社会経済研究所研究部長の島澤諭さんが詳しく解説されています。

▼少子化はもう止められない「出生数90万人割れ」へ少子化が加速する社会の課題とは
https://news.yahoo.co.jp/byline/shimasawamanabu/20191010-00145900/

社主も以前少子化を記事にしようと調べていたときに知ったのですが、実は近年、出生率は回復傾向にありました。2005年に過去最低の1.26を記録したあと、じわじわと上昇し、2016年には1.44まで戻っていたのです。

確かにそう言われてみると、30代に入った社主の同級生らもこの時期に相次いで子どもを2人3人ともうけていたので、ちょっとずつ子どもを育てる余裕が出てきた=経済的な余裕が出てきたのかな、と想像していました。

しかし島澤さんの記事によると、決してそうではないようです。

「2006年から2015年に至るまでの少子化の反転(つまり出生率の上昇)は、雇用の不安定化や晩婚化で出産のタイミングを遅らせてきた団塊ジュニア世代にとって、子供を産むためにはもう後がない状態になったことで出産を始めたというテンポ効果によってもたらされたものでした。」

もう後がない状態になったから出産を始めた」。大事なことなので、繰り返しました。

つまり、近年の出生率の上昇基調は、景気回復や国の少子化対策が功を奏したわけではなく、単に「いま産まなければもう産めない」と追い詰められた家庭に産まれただけだったのです。先の同級生たちも世間的には晩婚だったので、記事が指摘するように「今産まなければ」という考えで子どもをつくったのかもしれません。

しかしここに来て、とうとう国が出生率回復の決め手として当てにしていたボリュームゾーン「団塊ジュニア世代」の出生率ボーナスが終了。今後は先細りするしかなくなったわけです。

中学生向け「公民」の教科書には、「少子化が進んで現役の働き手=納税者が減ると、社会保障の基盤が弱くなり、その分、現役世代1人当たり経済負担は増える」という感じの記述があります。これは社主が中学生だった20年以上前からずっと教科書に載っている内容ですが、結局その後20年間、良い意味で教科書を書き換えるような変化は訪れず、少子高齢化はみるみる加速。むしろ、当時の教科書にはなかった「介護保険制度」や「消費増税」という残念な用語が書き足されることになりました。

社会科では、少子高齢化を「現代日本の課題」として「外国人との共生・日本の国際化」などと並べて解説してきました。そしてこの「課題」という言葉には「何か対策をすれば解決できる」という希望的ニュアンスが含まれています。ですが、少子高齢化はもはや課題のレベルを超え打つ手のない受け入れるべき事実です

それでもあえて解決策を出そうとするなら、「80歳以上の高齢者を全員安楽死させる」とか「優秀な遺伝子を持った子どもを国家施設で大量生産する」とか、ディストピアSFみたいな方法しか思い浮かびません。

もう少し現実的な解決策があるとすれば、少子化という現象が先進国全体の傾向である以上、米国のように移民を大量に受け入れて多民族国家を目指すというやり方もなくはありませんが、今の日本なら移民を受け入れるよりも「攻めの姿勢」の方がさらに現実的かもしれません。大東亜共栄圏を復活させて、東南アジアの数値を出生率に組み込んで測定し直すという方向などいかがでしょうか。

「どっちにしてもディストピアSFじゃねえか」というツッコミはさておき、この少子化を事実として受け入れなければならない以上、今後は少人数で回る国作りへと方向転換するしかありません。ちなみにこの点に関しては、今話題の小泉進次郎環境大臣が以前から「人口減を強みに変える」ということを主張しておられます。

「私は人口が減っていく部分をすべて移民で、っていうのは反対です。人口減少を強みに変えるという発想のなかで、日本が守るべきものを守りながら、技術の革新、イノベーションをより危機感を持って進めるかということを、どこまで追求できるかをチャレンジする国家になったほうがいいと思います。」

▼小泉進次郎氏が若者に訴えた 「もう人口減少、嘆くのやめませんか」
https://www.huffingtonpost.jp/2016/10/09/shinjiro-koizumi-youngvoice-2016_n_12420990.html

例によって、具体的な政策が見えてこないので、この発言だけを見る限り「この人に任せて大丈夫かいな」などと思ってしまうのですが、社主はもういっそ「強みという発想自体も辞めるべきではないかと思います。簡単に言えば「経済大国という強みにこだわらず看板を下ろしてしまえばよいのです。

決して経済成長を諦めなければならないと言っているわけではありません。もし今の日本にまだ成長の余地が残されているとするなら、徹底的に追求すればよいでしょう。しかし政権交代後の7年間、「経済大国の看板を懸命に維持しようと大企業優遇の政策を強めた割にはその富が弱者へと回されず、そのうえ人為インフレによって、年々生活費が上昇しているのが現状です。

2013年に掲げた安倍首相の約束が正しければ、4年後の2023年には国民1人当たりの総所得が今より150万円増えているはずですが、本当に実現するのでしょうか。

▼首相、1人あたり国民総所得「10年後に150万円増やす」(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFL050LJ_V00C13A6000000/

出生数が想定以上のペースで下がっている理由の1つに「自分が今これだけ苦しい生活をしているのに、これから生まれる子どもにこれ以上の辛さを味わわせたくない」という、ある意味での親心もあるでしょう。国がいくら「子育て支援」を連呼して暗に「産めよ殖やせよ」をほのめかそうと、共働き世帯の増加などに配慮した政策がうまくいっていないから誰も産まないし殖やさない。やはり数字は正直です

「経済大国」に関してもう1つ。最近、あの奇跡の高度経済成長でさえ「日本人の実直さ・勤勉さが理由ではなく、本来の労働効率の悪さを1億人越えの人口と残業ありきの長時間労働で補ってきただけ」という身もふたもない分析が出てきたりもしました。

▼日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/08/post-78.php

「日本はかつて豊かな国だったが、近年は競争力の低下や人口減少によって経済力が低下しているというのが一般的なイメージかもしれない。だが、現実は違う。」

「先ほど、日本の労働生産性は先進各国で最下位であると述べたが、実はこの順位は50年間ほとんど変わっていない。日本経済がバブル化した1980年代には、各国との生産性の差が多少縮まったものの、基本的な状況に変化はなく、ずっと前から日本の生産性は低いままだ。1人あたりのGDP(国内総生産)が世界2位になったこともあるが、それはほんの一瞬に過ぎない。」

労働生産性が先進国最下位の国が、先進国で最も深刻な少子高齢化になっているということは、かつてのような「人海戦術が通用しなくなったことを意味しています。このように少子高齢化は、それを起爆点として悲観的な将来へと次々連鎖していくのです。そして20年前は「課題」の1つに過ぎなかった未来像を、私たちはいよいよ現実として甘受しなければならない段階に達しつつあります。

話が変わりますが、これまで会報では何度か書いてきたように、社主は「UK」の名の通り英国びいきなのですが、かつて覇権国家「大英帝国として人一倍のプライドを抱いていたその英国も、第二次世界大戦後、その看板を下ろさなくてはならない事件がありました。

それが1956年のスエズ危機です。英国はこの時、米ソ両大国から見放され、その結果スエズ運河を失うとともに、もはや欧州の一国家でしかないことを世界中に知らしめる顛末となりました。その後、世界における英国の地位はご存知の通り。いまだに自国を世界の盟主だとは当の英国人でさえ誰も思っていないでしょう。

長い長い不況にさらされ、日本人としての自信を失ったと言われる中、「日本を取り戻す」と気概を示すことは、それはそれで大事なことかもしれませんが、今必要なのは精神論ではなく残酷な現実から目を背けない覚悟です。とは言え、同じ現実の甘受でも、もう少し賢いやり方があってもいいはずです。

1990年代、英国では『キーピング・アップ・アピアランシズ(体面を保つ)』という、自分は労働者階級なのに上流ぶる滑稽なおばさんが出てくるシチュエーション・コメディが人気を集めました。身の丈に合わないことをしようとして失敗するバケットおばさん(本人はフランスっぽく「ブーケ」と名乗っている)の滑稽さには、そのタイトル通り、必死で体面を保とうとしている今の日本に通じる部分が感じられます。

そしてまた、バケットおばさんをバカにして終わるのではなく、彼女の振る舞いの中に誰しもが持つ虚栄心のような性(さが)を見出し、さらにそれを自虐や哀しさを含んだユーモアへとつなげていくところが英国コメディの巧みさでもあります。

長年、実直さと勤勉さを売りにしてきた日本で、凋落するこの現状を自嘲・自虐として笑いに変えるのは難しいかもしれません。しかし、人口減を嘆かず、さらに「人口減を強みに変える」という経済指標を絶対視した気概も捨て哀愁ペーソスをもって受け入れるのも、これからの時代を生き抜く一つの知恵であるように思います。

沈みゆくタイタニック号に取り残されて為す術なくなった乗客だって、あり得ない希望にすがりつこうとパニックになるより、せめて皮肉の一つでも残して海の藻くずと消えた方が潔くて粋じゃないですか。

image by: Shutterstock.com

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京都市生まれ。滋賀県在住。虚構新聞社社主。2004年3月、虚構記事を配信するウェブサイト「虚構新聞」を設立。2010年「アルファブロガーアワード」にノミネート。第16回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品受賞。2012年開始のメルマガ「虚構新聞友の会会報」では、記事執筆の舞台裏やコラムなどをお届けしています。

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