なぜ20歳の時に年金制度がなかった人も年金が満額貰えるのか?

 

1.昭和13年7月18日生まれの男性(今は81歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

20歳になるのは昭和33年7月17日ですが、国民年金はまだ始まっておらず、厚年や共済にも加入しておらず何も年金には加入してなかった。その後、昭和36年4月1日から厚生年金や共済等に加入してない人は国民年金に強制加入となった。昭和36年4月時点は家の事業を手伝っていて、平成5年8月までの389ヶ月間は国民年金保険料を納めた。

なお、昭和45年10月から付加年金制度が始まり、付加保険料を同時に平成5年8月まで納めた(できた当時の付加保険料月額は350円だった。昭和49年1月から今の月保険料400円になる)。平成5年9月から平成6年8月までの12ヶ月間は未納。平成6年9月から60歳前月の平成10年6月までの46ヶ月間は厚生年金に加入した。この46ヶ月間の平均給与(平均標準報酬月額)は54万円とします。

さて、この人の生年月日だと60歳から厚生年金、65歳から老齢基礎年金が貰える人。今回は従前保障額で計算してますので改定率や乗率がいつもと異なってます(たまにはこっちの計算で^^;)。

  • 60歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→54万円×8.41(生年月日により定められた乗率)÷1,000×46ヵ月×0.998(従前保障改定率。主に今までの物価変動の結果今は0.998)=208,487円
  • 60歳からの老齢厚生年金(定額部分)→1,626円(令和元年度定額単価)×1.268(生年月日により定められた乗率)×46ヵ月=96,188円
  • 60歳からの老齢厚生年金合計額は、報酬比例部分208,487円+定額部分96,188円=304,675円(月額25,389円)

次に、65歳になると国民年金からの老齢基礎年金が発生する。

  • 老齢基礎年金→780,100円(令和元年度満額)÷444ヵ月(37年)×435ヵ月(←国年389ヵ月+厚年46ヵ月)=764,287円
  • 付加年金→200円×275ヵ月=55,000円

さらに、定額部分は老齢基礎年金に移行して差額加算という年金になる。定額部分は65歳で消滅。

  • 老齢厚生年金(差額加算)→1,626円×1.286×46ヵ月-780,100円÷444ヵ月×46ヵ月(昭和36年4月以降の20歳から60歳までの厚生年金期間)=96,188円-80,821円=15,367円

老齢基礎年金を計算する時は、780,100円÷480ヵ月(分母)…とするところを、この男性は分母が444ヵ月(年だと37年)になってますよね。生年月日が昭和13年度生まれなので、国民年金が始まった昭和36年度時点ではもう23歳になってしまう人です。これじゃあ23歳から60歳までで480ヵ月なんて納めたくても無理だから、20歳から3年オーバーしてる分を引いて加入可能年数を37年としてるわけです。分母が普段は480ヵ月(40年)だけど、444ヵ月(37年)に短縮されてるから、年金額が急激に低くなる事が避けられている。よって、65歳からの年金総額は、

  • 老齢厚生年金(報酬比例部分208,487円+差額加算15,367円)+老齢基礎年金764,287円+付加年金55,000円=1,043,141円(月額86,928円)

もし妻に配偶者加給年金が付いていたならこの男性の老齢基礎年金に振替加算152,660円(この男性の生年月日による)も付いている。

というわけで、ちょっとひと昔前の生まれの人はいろいろと短縮措置があるので気を付けなければいけません。

※補足

この男性は昭和13年7月生まれですが、昭和36年4月から国民年金に加入すると60歳前月の平成10年6月までの447ヵ月は加入できますよね。加入可能月数上限は444ヵ月ですが、加入しようと思えば447ヵ月加入できる。しかし、もし3ヵ月オーバーして国民年金保険料を納めていた場合は還付する事になる。

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
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