このようにスポーツの世界に欠かせない自己効力感ですが、ある条件が加わることで、日常生活で遭遇する問題や困難、様々な要求に効果的に対処するための大きな力になることも明かされています。
その条件とは……、
- 競技生活に長く携わっていること
- スポーツの場面で、自分の能力が伸びていくことに、楽しみや喜びを感じてる
という2点です。
挑戦し続けているとうまくいかないことにも度々遭遇します。どんなに自分の力を信じようとも、成し遂げられない壁にぶつかるのです。
そんな時、自分の弱点やカッコ悪さを受け入れ、再び立ち上がり挑む。繰り返し繰り返し挑む。そういった経験を繰り返すと、自分への信念が限定された場面から人生という広い世界に広がっていく。つまるところ、スポーツはただのスポーツではなく、人生そのものなのです。
さて、今回の日本代表はジェイミーHCが「ONE TEAM」にこだわり続けたことで、「信じるのは練習と自分だけ」という感情が、「信じるのはともに練習してきた自分と仲間」という共感に広がりました。
私はこの「自己と他者の共存」こそが日本代表の真の強さだと考えています。
人間の心の働きを巡るメカニズムの中で、自分の力を信じることほど力強いものはありませんが、人類は「互いに依存しあう集団」を作ることで生き延びてきました。他者と協働することで生き残ってきた人類の歴史は、現代の私たちの深部に血流のごとく刷り込まれています。
状況が厳しければ厳しいほど、誰もが自分ができることを探し、互いが依存しあいながらも、それぞれが自立して動く。
自己や自立ばかりが強調されるご時世だけに「ONE TEAM」という言葉は、私たちが忘れかけている大切なことを思い出させてくれたように思います。
ラグビー日本代表。本当にありがとうございました!みなさんのご意見もお聞かせください。
image by: Faiz Azizan / Shutterstock.com
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年10月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。