今回、Hard Brexitという結果になった場合、マクロン大統領が狙うシナリオは、『ほかに離脱を目論む南欧諸国(スペイン、イタリア、ポルトガル、そしてギリシャ)に釘を刺して、離脱がいかに大きな痛みを伴うかを思い知らせることで、フランス主導のEUの結束を狙う』ということと、EUへの残留というカードをちらつかせることで、残留に前向きな北アイルランドを英国から引きはがし、アイルランド共和国と“念願の統一”をするように仕向けることで、アイルランドの経済の規模の拡大に加え、英国を完全にEUから切り離すという狙いがあるように思います。
実際に、EU27か国がどの方向に動き、英国はそれに対しどのような“返答”を行うのかは、まだ不明ですが、結果がどのようなものであっても、盤石の結束を誇っていた独仏の間には隙間風が今後吹くことになり、それは、拡大路線を続けていたEU外交政策の大きな転換点となることは間違いないでしょう。
『ドイツ主導でいろいろと政策が決められてきた』と不満をためているポーランドやハンガリーなどの中東欧諸国の動向も気になりますし、ポピュリスト・反EUの色合いを強めてきたイタリアやギリシャ、国内政治が不安定化しているスペインなどの“主要南欧メンバー”の動向も注目しないといけません。
Brexit期限延長という結果が出る可能性はゼロではありませんが、仮に嵐が去ったように描かれるであろうそのような事態でも、独仏間に生じた綻びと、それを敏感に感じ取る周辺国という図式ができ、それはEU統合にとっての、おそらく最大の試練になるような予感がしています。
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