どこでもドアならぬ「どこでも部屋」。クルマが終の棲家になる日

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長い通勤時間、窒息しそうな満員電車…平均的な収入のサラリーマンを取り巻く通勤環境は非常に過酷です。こうしたストレスを軽減する方法は、高い家賃を支払って都心の駅近物件を確保する以外に無いのでしょうか。これまでメルマガ『週刊 Life is beautiful』で車にまつわる様々なアイデアを提言してきた世界的プログラマーの中島聡さんは、車にある仕掛けを組み込めばサラリーマンの通勤苦労が解決すると予想しています。

自動車の未来 

先週「ニーズから始めるプロダクト・デザイン」というタイトルで、私の出先でのニーズについて語りましたが、今回は全く別の角度から自動車の未来を語ってみたいと思います。

元ネタは、シンギュラリティ・ソサエティで開催した「アイデア・ソン」で私が属していたグループのメンバーから出たものです。その後私なりに考察を加えてみましたが、ビジネス・プランとしても悪くないと思うので備忘録代わりに書いておきます。

このビジネスで注目するのは「住居」に関するニーズです。特に都会で働く独身の人のニーズを簡単にまとめると、以下のようになります。

  • 朝の通勤ラッシュが辛いし、時間が勿体無い
  • しかし、都心にある会社に近いところは地価が高く、家賃もとても高い。
  • 家賃が安いアパートは、都心から離れている、駅から遠い、古くて汚い、景色が悪い、環境が悪い、水害の危険がある、などの欠点がある。
  • 風呂やトイレは必要だが、掃除が面倒。
  • コンビニやコインランドリーが近いことも重要。

つまり、「広くなくても良いので、小綺麗で、静かで、安全で、便利で、通勤が楽なところに暮らしたいけど、家賃はそれほど払いたくない」といのが共通のニーズです。こんな要求全てに答えてくれるアパートは存在しませんが、「自動運転車を住居として使う」という発想の転換をすると、この要求に答えるサービスを提供できる可能性が出てきます。トヨタが提案している e-Pallet が5畳ほどの広さがあるので、これを住居+移動手段として使った場合にどんな価値が提供できるかを考えてみます。

通勤:住居がそのままオフィスまで移動してくれるので、通勤ラッシュとは無縁です。住居のまま移動するので多少時間がかかっても問題ないし(朝食を食べても良いし、寝たままでも構いません)、渋滞を避けるために、通勤渋滞が始まる前に都心に移動しておくことも可能です。

立地:夜中に駐車して充電する場所は必要ですが、電車通勤が必要ないので駅から遠い場所でも問題ないし、極端な話、普段は河川敷のような危険な場所を使っていても問題ありません。増水の危険がある場合のみ、あらかじめ別の場所に移動しておけば良いのです。同じ場所に駐車する必要すらないので、金曜の夜から月曜日の朝までは都心から遠く離れた場所に移動するなども気楽に出来ます。

風呂やトイレ:5畳の空間に風呂やトイレを置くスペースはないので共同のものを使うことになると思いますが、「安アパートの共同便所」のイメージを払拭するためには、必要以上に綺麗な風呂とトイレを用意すべきだと思います。風呂に関しては、一人で入れるものと共同の大浴場があり、一人で入れるものに関しては、「自分のためだけにお湯をためて入る」事が可能であるべきだと思います(これに関しては、追加料金があっても良いでしょう)。

配管などを考えると、風呂やトイレが移動するよりも、部屋がその都度移動して外を歩かずに使えるようにしておけば「寝巻きでトイレに行く」「部屋で裸になって風呂に入る」などが可能になります。共同の大浴場の方には、スポーツジムがあっても良いと思います(このサービスを使うと、歩く必要がほとんどなくなるので運動は重要です)。

トイレに関しては移動中に行く必要もあるでしょうから、移動中に「トイレに行きたい」とリクエストすると、遠回りにならない、もっとも近い公共のトイレがあるところ(もしくは契約している施設)まで連れて行ってくれる必要があります。自分で車を運転しているとトイレ探し(および一時停車する場所探し)が結構ストレスなので、このサービスは重要です。自動運転車なので、一時停車する場所がなければしばらく走って迎えに来ることも出来ます。

コンビニやコインランドリー:これらに関しても、必要に応じてそこまで(部屋ごと)連れて行ってくれる機能があれば十分です。コインランドリーの場合は、洗濯・乾燥が終わった時に取りに行く必要があるので、そこもサービスと連動していると便利です。

値段:このサービスを使うと、アパート代と交通費の両方が不要になるので、月10~15万円で提供できれば支払ってくれる人がいると思います。日本では会社が交通費分は負担するのが前提ですが、住所が不定になるので、会社との交渉が必要になるかも知れません。

問題は、こんなサービスを月10~15万円で提供できるかどうかです(水道代とガス代は不要、電気代は別料金)。

もっとも大きなコストは車両価格で、仮に車両価格500万円(家具は入居者が用意するので、自動車は単なる箱です。なので、商業用バン+アルファの値段だと考えて良いと思います)、10年で償却と考えれば、それだけで月5万円程度になります(金利によって異なります)。

電気自動車なのでコストはガソリン車と比べて安いのですが、タイヤとかブレーキパッドの交換は必要です。それに、夜中に駐車する場所、トイレや風呂のサービスを提供するとなると、月10万円で利益を出すのは難しいと思います。

そうなると、月15万円払える層をターゲットに付加価値の高いサービス(インターネット、温泉、スポーツジムなど)を提供し、粗利を2~3万円にするのが現実的な落とし所でしょうか。

image by: Clari Massimiliano / Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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