アジア麺ロード in 那覇で感じた「東アジア○○共同体」の可能性

 

●韓国の「冷麺」はジャガイモ?

韓国では麺は「ミョン」で、やはり中国由来である。冷たくして食べるのが冷麺、暖かいスープで食べるのは温麺で、これは日本の蕎麦やうどんの食べ方と同じである。沖縄には冷麺も冷やしソバもない

韓国の麺は、蕎麦粉とジャガイモの澱粉を混ぜたものだが、釜山には小麦粉とサツマイモの澱粉で作るものがあるというから、素材的には似て非なるもので、ソバとうどん、ジャガイモとサツマイモの文化が入り交じっているということか。

ちなみに、故・金正日が大好きだったのが「盛岡冷麺」で、日本が北朝鮮に対して禁輸するようになって一番困ったのはこれだったという説がある。金正恩も同じであるかどうかは分からない。盛岡冷麺は元は蕎麦粉とジャガイモで作ったが、今は蕎麦粉を入れずほとんどジャガイモだけで作っているらしい。

このように「麺」を辿っていくとどこまでも遠く行ってしまいそうで、切りがない。ご関心ある方は、上記の平松ドクターの書や、森枝卓士『全アジア麺類大全』(旺文社文庫、86年刊)、石毛直道『文化麺類学ことはじめ』(講談社文庫、94年刊)、同『麺の文化史』(講談社学鬱文庫、06年刊)などを繙いて頂きたい。
『全アジア麺類大全』
『文化麺類学ことはじめ』
『麺の文化史』

●沖縄に「アジア麺類博物館」を

こうやって、非力な我々が毎年、資金を集め出展者を募ってわずか2日程度のイベントとしてやるのは、なかなか大儀なことで、夢を言えば、新横浜の「ラーメン博物館(ラー博)」のような常設の施設にしてアジア中からの観光客を呼び込むようにしたい。

ラー博は、25年前に「全国各地のラーメンを飛行機に乗らずに食べに行ける」という分かりやすいコンセプトのフード・テーマパークとして、10店ほどのラーメン屋を集めてオープンし、今では中国人観光客も多く訪れる観光名所となっている。1階はラーメンの歴史と文化を表す展示で、最近はだいぶ内容が充実し、麺打ちの体験プログラムやミュージアム・ショップなどが人気となっているらしい。

地下1階から2階は、昭和レトロ剥き出しの空間に10店ほどのラーメン店が味を競っている。これらの店は基本的に常設でなく、3カ月から1年程度で“卒業”して入れ替わっていく仕組みとなっていて、それは「店が代わったからまた行ってみようか」という物好きリピーターを増やすための作戦らしい。

新横浜とは、ある意味、中途半端なロケーションであるけれども、那覇でこれを考えると、今現在、大きな客船でやってくる1000人単位の中国などからの観光客が「まず、取りあえずここへ行って、食べ慣れた麺で小腹を満たして、さてそれからそれぞれの目的や好みに応じて三々五々と市内のどこかに散っていく」というゲートウェイとしては、数百人を一度に受け入れられてしかも回転率が高い「アジア麺類博物館」は商売として成り立つのではないか。

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