アジア麺ロード in 那覇で感じた「東アジア○○共同体」の可能性

 

●麺以外にも例えば「豆腐」

麺というのは単なる思いつきにすぎず、「東アジア○○共同体」の○○には、何じゃらかんじゃら、何でも挿入可能である。

宮里千里『シマ豆腐紀行』(ボーダーインク、07年刊)は、沖縄特有の硬くて締まりのよいシマ豆腐を起点にして、その沖縄からの南米やハワイへの移民を中心とした世界的な広がりを辿った物語である。ニッポンの豆腐には味がない。それに対して沖縄の豆腐はそれ自体に味があり、しかも硬くて歯ごたえがあり、断乎として自己主張する。う~ん、言われてみればそうだ。豆腐を軟弱なものと決めつけていたのは偏見かもしれない。
『シマ豆腐紀行』

そういう目で見ると、日常生活の中で我々が「あって当たり前」と思っている品々を、アジア的な広がりの中で再吟味してみるというのは面白い作業で、例えば、「豆腐」の近隣で同じ大豆製品で「納豆」というのはどうなのかと思えば、そういうことを考えている先人はいるもので、高野秀行『謎のアジア納豆』(新潮社、16年刊)は面白かった。
謎のアジア納豆

別に、食文化だけとは限らない。いきなり飛び跳ねるけれども、書家の石川九楊の『漢字がつくった東アジア』(筑摩書房、07年刊)は凄い書物で、これは麺とか何とかのサブカルチャーの次元ではなく、文明の基礎部分の文字というところをめぐって、何を考えなければならないかを教えてくれる。
漢字がつくった東アジア

本書の第7章は、「琉球から沖縄へ」、第8章は「ヤポネシアの空間」で、中身が深い。島尾敏雄が言い出した「ヤポネシア」という言い方には、ヤマトの側から奄美・琉球を絡め取ろうとする禍々しい思想が裏に貼り付いていると喝破したのは、この人が初めてではないかと思う。

このようにして、アジアから沖縄を通して日本を見るようにするとこの国のおかしさがよく分かってくるのである。

image by: Shutterstock.com

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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