日本経済をスカスカにした真犯人、日本発「多国籍企業」の罪と罰

 

私はグローバル経済を基本的に支持しています。自由な国際市場があって、自由な競争がされることで、多様な人材のコミュニケーションが生まれ、新しいアイディアが実現されていき、人類全体としては生活水準の向上につながるからです。自由貿易も同じ理由から賛成です。

また、空洞化といわれる現象、つまり多国籍企業がモノを作る場合に、先進国である本社で製造してしまうと、コストが高いので途上国で生産してコストを抑制するとか、そうした途上国も販売先に加えていくというのは、水が高いところから低いところへ流れるように、仕方のないことだし、余程の弊害がない限り運命として受け入れるべきと思ってきました。

同時に、市場によっては「生産を現地でやって、雇用を創出しないと輸入関税をかける」という地域があり、その場合も現地生産を進めることで本体は空洞化することがあります。これも場合によりますが、避けられないケースが多いと思います。

ところが、現在の日本発の多国籍企業の場合は、生産と販売だけでなく、研究開発からマーケティング、あるいは経営戦略までドンドン外に出してしまっています。例えばトヨタの場合では、多くの予算を使ってCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、EV化)分野向けの研究開発をしていますが、そのほとんどは海外でやっています。

そうなると、研究開発費を払う先、研究開発のために雇用する人材への給与なども海外になっていきます。そしてノウハウは海外に蓄積されて、徐々に「日本発の多国籍企業であったものが事実上は無国籍企業になっているわけです。

そうなのですが、今でも「トヨタが最高業績」だと日本の新聞は喜ぶわけです。また、日本の鉄道車両メーカーが、ヨーロッパで大量受注に成功したり、アジアで新幹線プロジェクトを請け負うことが決まると、メディアは良いニュースだとか、これで日本経済も元気になるなどという言い方をします。

悪いことではありませんが、実際は鉄道のような公共インフラの場合は、特に車両の大量受注のようなケースですと、各国は雇用保障のために、現地で生産することがディールの条件になっているわけです。そうなると、例えば英国の鉄道車両を日立が受注したとしても、日本経済への貢献は一部の技術に関するライセンス料ぐらいにしかならないのです。

つまり、日本経済といってもトヨタとか日立という多国籍企業の「全体の業績」と、純粋に日本に金が落ちて、日本で金の回る日本のGDPとは全く別物だということになります。この点が、どうにも誤解が多いわけです。

どうしてかというと、経済新聞とか経済記事を読む人は、圧倒的に正規雇用の人が多いわけです。彼らの感覚は、まず自分の会社、日本における自分の業界の発展・成長が大事だという考えが中心になっています。ですから、トヨタが市場最高益だとか、日立が欧州で大型受注をしたというと、喜ぶわけです。

ですが、純粋に国内の税収とか、雇用とか、消費という点では、確かに海外で稼いだ金で日本勤務の正社員のボーナスが増えたり、アベノミクス効果も加わって、日本での株価が上がれば、多少は日本での消費にはいい影響はあるでしょう。日本での採用とか雇用には若干プラスかもしれません。ですが、それだけです。

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