管理不全になってからでは遅い。マンションが病む「3つの兆候」

shutterstock_1548724163
 

センセーショナルに報じられることが多い、メンテ不足のため廃墟のような姿になった「管理不全マンション」。しかし専門家によれば、そのような状況に陥る物件の数はそう多くないといいます。それでも「無関心、不熱心のつけは、後から自分たちに回ってくる」とするのは、マンション管理士の廣田信子さん。廣田さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、面倒だと感じてもマンション管理への意識を持続させる事が重要と記しています。

そんなに簡単に管理不全にはならないが「つけ」は回ってくる

こんにちは!廣田信子です。

先日は、最近メディアで盛んに言われている「『タワマンは危ない』は本当か。マンション管理士が検証した結果」という記事を書きましたが、もう一つ、最近、様々な媒体で問題にされるのが、「管理不全マンション」です。

管理不全マンションすなわち、管理組合の機能不全で建物の劣化が著しいマンションは、一定数発生しています。リゾートマンション等には数多くみられますが、都市部でも事例が見られます。東京都等がその対策に乗り出していることもあり、メディアで取り上げられることが多いのです。で、繰り返し、事例としてあげられるのは、いつも同じ物件の話です。他に、絵になって取材できる事例がないからです。

でも、そのマンションは、そもそも最初の成り立ちから、かなり特殊なマンションです。最近は、「『廃墟マンション騒動』に見る、日本中でアスベストが飛散する日」にも書いた滋賀県野洲市の廃墟マンションも、取り上げられます。

このマンションは、空き家対策特措法に基づく取り壊し命令がマンションでは初めて出され、市の代執行による解体が決まっています。私も視察に行きましたが、ここまで放置されたのには、反社会的勢力が関係するかなり特殊な事情があります。

このように、建物の劣化が放置されて、明らかな管理不全マンションとなっているものはそれぞれがかなり特殊な事情を抱えています。ですから、そういう事例を集めて、一般のマンション住民の危機感を煽るのはちょっと違うのでは…と感じてしまいます。普通に住民が住んでいれば、住めなくなるほど建物の劣化を放置することはありません。

その点について、マンション管理センター通信10月号のコラムで、千葉大学大学院の小林秀樹先生が書かれています。

「日本マンション学会の特別委員会の調査結果の好ましいこととして…所有者の多くが居住者である『一般ファミリー向けマンションや団地では管理不全マンションの報告はなかったことです。時々マンションの空き家が話題になりますが、管理費等が支払われている限り問題はありません。つまり、日常の管理をしっかり進めていれば、管理不全はやはり遠い将来のことです。もちろん、管理組合が管理不全に陥る何らかの兆候がある場合は、早めに専門家に相談することが望まれます。例えば反社会的団体の関与、修繕積立金の著しい不足、管理組合の内部対立等です」

…と。

概ねの住戸に居住者がいて管理会社に管理委託していて、輪番制で理事にあまり熱意はなくても、理事会があって、出席者は少なくても、年に1回総会が開かれていて、修繕積立金が不足気味でも大規模修繕工事を何とかしているようだったら管理不全になるようなことは当面はないのです。

ただ、無関心不熱心のつけ」は、後から自分たちに回ってくるかもしれません。「つけ」ですから、それは、自己責任で、自分たちで引き受けるしかありません。それは、すでに管理不全マンションになっているものをどうするか…ということとは、別のことです。

とはいえ、管理不全になった「つけ」も、結局は、自分たちで負うことには変わりありません。所有する者の責任からは逃れられないのです。どこで、どのように責任を果たしていくか…ということですが、後回しにしないで、少しづつ果たしていく方がぜったいにお得ですよね。後回しにして逃げていると「つけ」は大きくなりますから。

image by: Shutterstock.com

廣田信子この著者の記事一覧

マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 まんしょんオタクのマンションこぼれ話 』

【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

print
いま読まれてます

  • 管理不全になってからでは遅い。マンションが病む「3つの兆候」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け