3.若い世代のビジネスと高齢者のビジネス
会社の仕事は、若い世代を中心に回っている。若い世代のビジネスは、若い世代がメインターゲットになっている。ICT業界やゲーム業界は、若い世代による若い世代のためのビジネスを展開している。
一方、高齢化社会では、高齢者のライフスタイルが注目されている。しかし、若い世代が高齢者のライフスタイルを理解するのは難しい。高齢者のライフスタイルを理解するのは高齢者だが、それをビジネスにする高齢者は定年を迎えている。ここに大きな需給ギャップが存在している。
定年世代が取り組むべきビジネスは、高齢者のライフタイルビジネスである。高齢者のライフスタイルは、仕事中心ではない。趣味や芸術活動、遊びや旅行、社会貢献や社会活動を中心に回っていく。
あるいは、回っていくべきだと思う。企業組織内の幸せではなく、社会に対峙する個人としての幸せである。それをビジネス化することに意義があるのだ。
4.高齢者が自立できるビジネス
高齢者のビジネスは利益の追求ではない。活動の継続である。株主のためではなく、活動を継続するための経営を行う。余分な利益を上げる必要はないのだ。その活動で生活を維持し、活動が維持できればいい。ある意味では、ビジネスの自給自足である。
社会はビジネスの連鎖で構成されている。例えば、野菜を作るビジネス。その野菜で料理を作るビジネス。その料理を販売するビジネス。それぞれの利益でそれぞれの従事する人達が生活できればそれでいいのだ。
管理職を省き、広告も行わず、お金も借りず、ICT導入も最低限度にとどめる。最低限度のスケールのサプライチェーンを構成し、その中で自立していく。
効率を追求するのではなく、個々の健康維持のために、適度な労働を確保する。人間関係のストレスを削減するために、競争原理を排除する。全ての企業活動と正反対の発想でビジネスを再構築するのである。
高齢者は自立し、若者からの搾取を行わない。そのためにビジネスを行う。高齢者は常に社会活動に参加し、孤立しない。そのためにビジネスを行う。そんなビジネスを考えたいと思う。
編集後記「締めの都々逸」
「利益上げずに 損もしないで 金も借りずに 暮らしたい」
現役世代は、利益を上げることを考える。企業のため、株主のため。でも、定年世代は利益を上げないことを考えた方が良いのではないか。
給料も税金が掛からない程度に抑える。それでも幸せを感じるための趣味や遊びや芸術活動を重視する。それらを教えてくれる人にお金を回す。そうやって、皆が暮らせる社会はできないものか。
国として独立するのは大変かもしれないが、現在の国の制度の中で自立する仕組みを考えるのはどうだろうか。
私は以前、産地の活性化の仕事をしていたけど、結局、衰退する産地の活性化と高齢者の活性化は似ているような気がする。どちらも自立を目指すのだから。(坂口昌章)
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