会社に勤務していてふと気になること、ありませんか? 例えば、会社を欠勤した場合、いくら引かれてしまうんだろう? ということ。何となく月給をもとに日割り計算しているんだろうなと思う人が多いと思いますが、実はその算出方法に法律の定めはないんだそうです。「じゃあ会社ごとに異なるの?」「ウチの会社はどうやっているんだろう?」など気になってしまいますよね? そこで、今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、著者で現役社労士の飯田弘和さんが、欠勤控除額の算出方法として4つの方法をご紹介。会社側から見た賃金控除の考えを示しています。
実は各社でバラバラな欠勤者の賃金控除
月給者が欠勤した場合の賃金控除についてご質問を受けることがあります。まずは、月給者の給料がどういったものなのかという事を押さえておきましょう。
カレンダーの並びの関係等で、月によって働くべき日数(所定労働日数)や働くべき総時間数(月の所定労働時間数)が異なります。しかしそうであっても、その月の所定労働日数、所定労働時間数を働いたのであれば、月給として定められた額を支払うのが月給制です。ですから、たとえば2月と3月で所定労働日数が異なっていても、基本給には変わりがないのです。
では、月給者が欠勤した場合、給料はどうなるでしょう。通常は、欠勤した日数分の賃金が給料から差し引かれます。ノーワーク・ノーペイの原則です。働いた分の賃金は支払うが、働いてない分の賃金まで支払う必要はないという原則です。したがって、欠勤した場合には、その分を給料から控除します。
※ 欠勤しても賃金控除をしないという完全月給制の会社も世の中にはありますが、それは特殊な例でしょう
この時、給料から控除する金額はどのように算出すればよいのでしょう。これには、法律等の定めがありません。残業代については明確な計算方法が示されていて、その計算によって算出される金額を下回ることはできません。しかし、欠勤控除の金額については、そのような定めがありません。ですから、どのような計算によって欠勤控除金額を算出するかは、会社に任されています。会社が欠勤控除算出方法を自由に決めることができます。とはいっても、あまりにもおかしな算出方法であれば、無効と判断されるでしょうケド…。
一般的には、1日当たりの欠勤控除額の算出方法として以下のような方法をとる会社が多いと思います。
- その月の所定労働日数を分母として日割り計算する
- 1年間を平均した1ヶ月の平均所定労働日数を分母として日割り計算する
- 1年間を平均した1ヶ月の平均所定労働時間数を分母として時間単価を算出し、欠勤日の所定労働時間をかけて計算する
- 一律に(賃金計算上の)月の所定労働日数を〇日と定めておき、これを分母として日割り計算する
1.の場合、計算が楽チンであるというメリットがあります。ただし、月によって一日の控除金額が異なることになります。先月と今月で、欠勤したときに引かれる金額が違うという事が起こります。
2.~4.については、1.のような問題は発生しません。しかし、従業員がその月を全休した場合、月によって賃金が発生する月と、賃金額がマイナスになる月が発生します。
※ もちろん、計算上の賃金がマイナスになったからといって、その分を従業員に支払わせることはできません。その月の賃金は、マイナスではなくゼロとなります
また、3.については、残業代のための基礎単価を算出する際の計算方法と同様であるので、使い勝手が良いと思う会社もあるかもしれません。
とにかく、欠勤控除の金額については、余程複雑な計算方法を取らない限り、メリットとデメリット・矛盾が混在します。それを十分に考慮して、自社でどの計算方法をとるか、事前に定めておきましょう。その際には、あまり複雑にならない方が良いと思います。実際に運用していく上で、扱いやすい方法の方が、賃金計算に携わる従業員も楽ですし、働く従業員にとっても納得が得られやすいでしょう。制度を複雑にし過ぎたせいで労使トラブルに発展してしまった会社って、意外と多いです。制度が複雑で理解できないとき、従業員は、会社が騙しているのではないか・搾取しているのではないかと疑心暗鬼になりやすく、労使の信頼関係が崩れていきます。ここは注意していきましょう。
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