国際交渉人が解説。イランとイラクのデモが中東の混乱を招く理由

 

アラブ諸国間の連帯が崩れ、それぞれが内向きな政策に変わっていく中、その混乱に乗じて地域の主導権を取り戻そうとしているのがトルコです。

これまでは、分断をうまく用いてきたのは、アラブ諸国からの嫌われ者であるイスラエルでしたが、イスラエルも国内での政治的な空白を抱え、その中、アメリカからの後押しもあり、ヨルダン川西岸パレスチナ自治区のヘブロンにユダヤ人入植地の拡大を図るという強硬策に出てしまい、これまでデリケートな非干渉のバランスを保っていたサウジアラビア率いるスンニ派諸国からの“支持”が一気に“敵対”に変わってしまおうとしています。そのような中、サウジアラビア自身も、アメリカから離れ、地域における主導権を取り戻せずにいます。

その力の混乱と空白に“付け込んだ”のが、かつてのオスマン・トルコ帝国、トルコです。地政学的な位置付けを見れば分かりますが、トルコはアジアと中東、そしてヨーロッパの中間に位置する非常に戦略的な位置付けにあり、上手にふるまうことができれば、非常に大きな力を得ることになります。

最近まではNATOのメンバーとして、軍事的に重要な戦略拠点として、欧米諸国との友好をベースに影響力を蓄え、維持し、拡大してきましたが、オバマ時代に始まり、トランプ政権の下で決定化したアメリカとの考えの不一致を受けて、アメリカ、そしてNATOへのカウンターバランスとして、ロシア・プーチン大統領に大接近しました。

何度もこのメルマガでもお話ししていますが、トルコに来年配備される防衛ミサイルはロシア製の最新鋭S400ですし、これを機に、ロシアとの軍事的な協力を拡大する旨、エルドアン大統領が時折言及しています。これにより欧米諸国とロシアという対立構造をあえて作り出し、その“勝敗”を左右できるcasting voteを握ることに成功しようとしています。

そして、中東地域に対しての影響力を駆使し、シリア・イランとの友好関係を保ちつつ、サウジアラビアを筆頭としていた反イラン体制の分裂に乗り出しています。すでに、以前お話ししたように、イエメンを舞台にして、サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)の間を切り裂くことに成功しました。

サウジアラビアに対しては、カショギ氏事件以降、弱みを握ることでコントロールを試み、他のアラブ諸国に対しては、ロシアなどとの絶妙な距離感を用いながら、トルコの陣営に招き入れようとしています。

その効果は、すでにサウジアラビアやUAEにも出てきていて、サウジアラビアのアメリカ離れと、ロシアとの接近をアレンジするなど、トルコは再び、中東地域におけるフィクサー的な立場に復帰する動きを見せているように思われます。

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