想像を超える過酷さ。災害時にタワマン住民は生き残れるのか?

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近年、これまで考えられなかったレベルの災害に何度も見舞われている日本。国民一人ひとりの防災意識も向上しているとはいえ、まだまだ十分なレベルに達しているとは言い切れません。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』でマンション管理士の廣田信子さんが取り上げているのは、タワーマンションの防災対策。災害時により過酷な生活を強いられるとされるタワマン住民が備えるべきことや、「想定すべき最悪の事態」を考察しています。

今、新ためてタワーマンションの防災を考える

こんにちは!廣田信子です。

タワマンの防災対策に、また注目が集まっています。タワマンに暮らす人の増加に伴ない、注目度も上がっているのだと思います。2005年には、99万人だったタワマン居住者は、10年後の2015年には、197万人。2倍に増えているのです。197万人と言うのは、群馬県1県の人口に匹敵します。

で、もちろん2015以降もタワマンは増え続けています。首都圏では、2016年~2018年の2年間で、58棟のタワマンが完成しています。2019年以降も、183棟の完成が決まっています。

自治体は、タワーマンション住民を指定避難所にとても収容できないことから、自宅で避難生活を送れるように準備を促しています。しかし、エレベーターが止まったら超高層階は陸の孤島です。そんなところで、本当に避難生活を送れるのか…あまりシミュレーションがされていません。

防災備蓄について、タワーマンションに暮らす知り合いに聞くと、一番基本的な水の備蓄も十分ではありません

1人、1日3リットルが必要と言われますから、4人家族で必要な1週間分の水の量は、2リットルのペットボトル48本です。タワーマンションは、そんなに専有部分が広くありません。収納スペースが多いわけでもないので、そもそもそんなに備蓄品を置くスペースがないのです。

普段は、ネット通販で、必要な時に必要なものを購入するという生活をしているので、いつ必要になるかわからないもののためにスペースを使うということがなかなかできていないと感じます。高層階に水等の備蓄をしているマンションもありますが、避難生活の長期化には耐えられないのでは…と。

エレベータ─が動かない期間を甘く想定してはいけないと思います。地震や停電で止まったエレベーターは、点検業者が点検して異常がないことを確認しないと、動き出しません。マンションが、優先順位が高くないことも、皆さん承知していると思います。

停電でエレベーターが止まった場合、特にエレベータ─に問題が生じていなかったら、停電が解消されたら、すぐ動き出しそうですが、そうはいきません。停電が一定以上続き補助電源を使い果たすと、エレベータ─の心臓部がリセットされてしまうと言います。それで、新たに、そのマンションでエレベーターが正常に作動するように、停止する位置、時間等のデーターをすべて入力し直さなければならないので、簡単には動かせないと聞きました。

大坂北部地震の時は、府内のエレべータ─の55%が運転を休止し、95%が復旧するのに丸2日かかったと言います。それを首都圏に当てはめると、全面復旧には4日以上かかると言われます。

そして、この数字は、エレベーターに何の異常もなかった場合のもので、水害で電気系統が水没してしまったり地震の揺れでロープが建物にぶつかって破損した場合等は、その修理が終わるまでエレベーターは動かないのです。それにどれだけ時間を要するかは、わからないのです。

超高層住戸と地上階の階段での上り下りは、現実的ではありません。30階の高さは、大阪の通天閣の高さの同じぐらいといいます。約450段の階段の上り下りです。1階に水や食料、生活支援物資が届いても、それを取りに降りて運ぶのは容易ではありません。

高層階にお住まいの方、特に高齢者、小さな子供がいる場合は、エレベーター止まったときのために、親戚、友人等の避難先を日ごろから確保しておくべきだと思います。

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