さて、年金というのは昭和17年の戦時中にできて以来(昭和16年3月に公布された)、保険料を積み立てて将来は積立金とその運用収入を年金として受け取るというものでした。元々は年金は完全積立方式から始まった。戦後の日本は焦土と化し、更にハイパーインフレで一旦は年金制度は崩壊の危機に瀕し、昭和29年に再建された。
ところがその後も積み立てとしていきましたが、昭和30年代からの経済成長期のスピードが速すぎて、年金給付と現役世代の賃金との差が大きくなるばかりだった。当時の現役世代の賃金は増加の一途を辿る中で、年金額があまりにも低い水準として取り残されていった。
現役時代と老後の収入の差が大きすぎると、それでは生活保障としての年金の役割が果たせなくなるから、次第に現役世代の保険料をその年の年金受給者に支払うという賦課方式に転換していくようになった。
賦課方式はその年の現役世代が、その年の年金受給者に送るというやり方だから、少子高齢化が進行する日本では将来の後世代の負担を増大させてしまう危険性があった。保険料支払う現役世代が少なくなって、受給者は増える一方だったら年金額の水準を変えないと一人当たりの保険料負担が増大してしまいますよね(賦課方式はそういう人口変動に弱いと言われますが、時間を使って改正しながら対応していけば必ずしも人口変動に弱いというわけでもない)。
とはいえ、高齢化率は今後も止まる事無く、将来は今の28%が40%ピークになるという見通しになっている。このままでは現役世代の保険料の負担にも限界がある。そこで平成16年の年金改正で、現役世代が負担する厚生年金保険料の上限を18.3%(これを事業主と従業員で半分して負担)、さらに国民年金保険料は平成31年4月で法定額上限17,000円に決めた。
保険料という一番の年金財源の上限が決められてしまった。今後も受給者が増え続けるのに毎年の収入が固定されてしまった。経費がこれからも増えるのに収入はずっと一定といような感じですね。だから、この範囲で年金を支給しないといけない。この収入の範囲で年金支出を抑えれば年金は破綻しないですよね。
でも年金受給者は今後も増え続けて受給者がとどまる事無く増え続けるから、支出は増えていく。じゃあどうするか…という事でその平成16年改正で導入されたのが、年金の価値を引き落としていくやり方。
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年金というのは毎年の物価や賃金変動率によって金額が左右されます。基本的には物価が上がれば年金も上がり、物価が下がれば年金も下がる。この年金が経済変動で上がる時に、年金をそんなに上げない。上がる時に、そのまま上げない。たとえば物価が1%上がって、年金額が101万円になるものとします。でもこれを0.3%しか上げないという操作をする。そうすると、年金額の上げ幅は1,003,000円と価値が下がる。
何を要因で下げるのかというと、「高齢化で受給者増による年金負担増」という要因、「少子化で年金受給者を支える現役世代が減る」という要因を数値化した日本経済全体のマクロ的なものを、さっきの物価や賃金の伸びから差し引く。
何十年かけて差し引いて年金価値を引き下げていくと、現役世代が納める保険料収入と年金支給が一致する時が来る。つまり負担(保険料)と給付(年金)が均衡して、財政が安定する時が来る。現役世代の平均賃金に対して年金の価値が今までの60%程度から50%ちょいで均衡するまで価値を引き落としていく。









