問われる安倍首相の外交テクニック
外交テクニックとしては、これを正面からぶつけるのではなく、安倍首相とプーチン大統領の首脳会談のおりなどに、それこそ「頭をかきながら」、相手の顔を立てる姿勢で提案するとよいと思います。
安倍首相が、「色々と調べてみたら、ドイツ最終規定条約が出てきた。当然、大統領は知っていると思うが、日本側は気がつかずにいた。お恥ずかしいことだが、ここはひとつ、ドイツ最終規定条約の考え方を北方4島に当てはめてみてはどうだろうか」
そして、プーチン大統領が首を縦に振ったら、これまた水面下で米国側と話し合い、「米国の戦略的根拠地である日本列島が北方4島まで広がる」という理解のもと、ドイツ最終規定条約に準拠した3カ国条約の締結を受け入れさせるのです。
米国側が受け入れを認めたら、あとはプーチン大統領主導の形で「3カ国条約の締結が北方領土返還の条件」と打ち上げてもらい、今度は水面に出た形で米国を加えた3カ国の協議に入り、条約締結へと進んでいくのです。
プーチン大統領の「引き分け」発言は、ロシアが中国やノルウェーと行ってきた「面積等分」による領土問題解決の手法を北方4島にも適用しようとしていると考えてよいでしょう。これは、谷内正太郎前国家安全保障局長の持論でもあり、これによって歯舞、色丹ばかりでなく、国後島の全部と択捉島の20%が戻ってくるわけですから、日本にとっても悪い話ではありません。
安倍首相が4選を考えていないとしたら、任期までに歴史的業績を残すうえで、面積等分による北方領土返還は具体的な可能性を持つテーマだと思います。(小川和久)
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