【書評】三国志マニアが語る、ラーメンと三国志の意外な共通点

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老若男女問わず愛され、日本人でも知らない人はいないというほどに有名な『三国志』。皆さんも一度は手に取られたこと、あるのではないでしょうか?そんな三国志に関して、少し変わった経歴をお持ちなのか、今回ご紹介する著者の作者・箱崎みどりさん。現在はニッポン放送でアナウンサーをされていますが、東大大学院在学中に三国志の論文を書くほどハマってしまったんだとか。箱崎さんが2年かけてまとめあげた三国志への愛に溢れた一冊を、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の著者で編集長の柴田忠男さんがレビューしています。

偏屈BOOK案内:箱崎みどり『愛と欲望の三国志』

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愛と欲望の三国志箱崎みどり 著/講談社

著者はニッポン放送アナウンサー、気象予報士。東京大学大学院総合文化研究科修了、論文に「日中戦争期における『三国志演義』再話の特色」など多数。学生時代、そして社会人になってからも趣味で延々と調べ続けてきた「三国志」を、2年かけてまとめたという三国志愛ダダ漏れの研究書。好感度高し

なぜか日本人は「三国志」が大好きである。面白いから、キャラクターが魅力的だから、人生の教訓が詰まっているから、など色々言われるが、理由を並べたてるのも無粋なくらい高い支持がある。魏・呉・蜀いずれも勝者にならない滅びの美学があるから、諸行無常の響きがあるから、なんてのが格好いい反応なのかも。著者によれば人気の秘密は「日本でずっと読まれてきたから」だ。

魏・呉・蜀の三国鼎立時代を描いた「三国志」をもとに、史実3割、虚構7の小説に仕立てたものが、14世紀後半の「三国志演義」である。登場人物の事績や戦いは史実を基にしているものの、具体的エピソードは虚構が多い。バリエーションも多く、中国語では現在30種類以上が確認されている。日本では江戸時代に「三国志演義」が翻訳され、以降多様な「三国志」が生まれ続けている。

著者は小学2年生のときにNHK「人形劇三国志」に出会い、以来「三国志」を人生をかけて追い続けている。「三国志」関連書籍のバリエーションは、ラーメンに似ているという。この本ではラーメンガイドブックや研究本のように、歴史を含めて、どんな特徴や味があるのか、詳しく紹介する。筆者が独自に追跡してきた、日中戦争下の「三国志」ブームなど、研究成果も盛り込んだ本。

「世の中にたくさんある『三国志』関連本を読み尽くした方にも、きっと新しい発見をしていただける」と自信満々。吉川英治の「三國史」は、戦争下に新聞連載され、関連書籍が何冊も出版された。大河ドラマ「三国志」は日本において中国を知るための鏡、虎の巻としての役割を期待され続けてきた。中国を学ぶ小説といえば、魯迅やノーベル賞・莫言よりも「三国志」なのである。

この本では、通俗的な「三国志」の日本史に加えて、「三国志」に期待されてきた中国理解のツールとしての側面にも光を当てている。三国志と遭遇の個人史から始まり、現代作家による「三国志」の多彩な世界の紹介、日本では歴史上どう「三国志」が読まれてきたのかの分析など、今までにないディープな「三国志」研究の成果がここにある。好きな人にはたまらない構成だ。

正直いうと、素人にはちょっとついて行けないほど濃い内容である。だって、恥ずかしながら、わたしは「三国志」を小説で読んだことがない。読んだのは2000年に完結した、横山光輝の潮漫画文庫版「三国志」全30巻である。数年おきに何度か、全巻を通して読みかえしている。それでいいやと思ってきた。

30巻ってすごいボリュームである。完読まで数日かかる。同じく2000年に三笠書房から文庫版「早わかりコミック 三國志」全3巻が出た。守屋洋責任監修・とみ新蔵作/画である。歴史書「三國志」に則っている。絵が抜群にうまい。スピーディな展開が快い。何度読んでも飽きない。こっちが勝ち。アマゾンで検索したら、11円だった(泣)。吉川英治の「三国史」読もうかな。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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