氷が水に浮く原理を説明できる人はあまり存在しないという事実

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生物にとって生命の源で、工業的にも不可欠の存在で、大規模災害の原因ともなる性格をも持つ「水」。H2Oの化学式は誰もが知っていますが、私たちの水に対する科学的な知識は意外に少ないようです。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では著者で現役科学者のくられさんが、そんな身近な「水」とはどんな物質なのかを丁寧に解説しています。

水という謎の液体

たまにはちゃんとした化学の話もしましょう。

テーマは水。水is水。

水は水以外ではなく、それに水素やらケイ素やらが溶けたと自称するゴミが町中に売ってますが、機能的には水は水です。

水素水に至ってはザルで水を汲んで売るようなもの。水素分子はペットボトルのスキマから逃げ出すし、フタのパッキンのスキマからも余裕で逃げられます、というシロモノなわけですが、今日はそういうオカルト商売につばを吐きゲロをぶっかけてケツに高水圧洗浄機をつっこむ話ではなく、水という分子についての話です。

実は水というのは極めてへんてこりんな分子で、H2Oで表されるように水素2個と酸素1個で構成されています。地球でも相当多い物質で、地球の7割は海ですし、地下6kmまで水が存在することが知られています。

じゃあこの水で人類が使えるのは…となると、97%は海水で、残りの淡水の75%は氷として南極と北極に存在して…河川や湖などすぐに使える淡水は全体のたった0.05%です。

地下水は先の0.05%には含まれないのですが、埋蔵量が深さごとにわりとすぐに枯渇するので、工業的に使うと地盤沈下を起こすレベルで深掘りして採取しないといけなくなってコスパも極悪だったりします。

水が化学物質として奇妙というのは化学をそこそこ勉強しないと実感できません

例えば、まず水は非常に低分子であるということです。水の分子量は約18g/molですよね。対して、LPガスとかのプロパンなんてガスの代名詞ですが、44g/molもあります。水より分子が重いのに、余裕で常温ではガスですよね。高圧に缶につめてようやく液化できるレベルです。水に構造が近いH2S(硫化水素)もバリバリに気体ですね。硫化水素は34g/molです。おかしいですね。

これは酸素という原子が非共有電子対をもってることと電気陰性度が高いことから来ています。これによって常温の水分子は水素部分と酸素部分で互いに引き合って水素結合によって編み目の構造になることで見かけ上大きな分子として働くけど所詮は水素結合なのでぐにぐにと液体として振る舞うことが可能なわけです。

これが低分子の水が常温で液体である理由です。この互いに引き合う性質が今度は冷えたときに結晶構造を取ろうとすると、今度は分子間のスキマが増えるので密度は下がるので、氷は水に浮くわけです。溶けた鉄に固体の鉄をいれると沈むように基本的に固体が液体に密度で負けるというのはこれまた珍しい性質というわけです。

そういうわけで水ひとつとっても、語る話題は無限大。化学という物質で物事を見る目があれば、いろいろなものが見えてきて、インチキ科学にも欺されにくくなるわけなので、みんな理科を勉強しましょう。

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シリーズ15万部以上の不謹慎理系書「アリエナイ理科ノ教科書」著者。別名義で「本当にコワい? 食べものの正体」「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 」などを上梓。学術誌から成人誌面という極めて広い媒体で連載多数。

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【著者】 くられ 【発行周期】 週刊

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