公園の「鉄棒おじさん」に見る、ひとりコミュニティ活動の可能性

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少子化、核家族化などの要因で、ご近所付き合いや世代交流が失われコミュティが崩壊しつつある日本。これも時流として受け入れるしかないのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、定年退職したある高齢者の方が、自主的に地域住民交流の架け橋となっている事例を紹介しています。

「鉄棒おじさん」と「コミュニティ活動」の秘密

こんにちは!廣田信子です。

先日伺った大型団地の提供公園には、鉄棒おじさん」と呼ばれる方がいます。団地にお住いの定年退職された元気な高齢者の方です。公園で遊んでいる子供たちに、鉄棒の逆上がりを教えてくれることから、その愛称がついているのです。

その話を聞きながら理事長に敷地内を案内して頂き、公園につくと…土曜日の正午ごろなのに、いました!鉄棒おじさんが!

そして、幼稚園の年長から低学年の小学生がたくさん遊んでいました中心にいるのは鉄棒おじさん」です。別に、鉄棒の前に、ずっといる訳じゃなくて、公園内を移動して、植物や生き物を観察しているらしい様子も。それにつれて、子供たちも移動するので、「鉄棒おじさん」の居場所はすぐわかります。みんな、「鉄棒おじさん」が大好きなのです。

そして、見渡すと、その公園にいる大人は、鉄棒おじさんだけです。私は、久しぶりに保護者抜きで、公園でたくさんの子供たちが遊んでいる姿を見た気がします。

便利なところにある公園なので、団地外からも遊びに来ているようです。子供たちは、公園に行くと「鉄棒おじさん」がいるので、別に、友達と示し合わせなくても、公園に行って遊ぼうと家を飛び出せるのです。親も、「鉄棒おじさん」がいるので、安心して子供だけで公園に出せるのです。今ではなかなか見られなくなった光景です。

「鉄棒おじさん」…すてきな生き方ですね。何だか、その周りに光がさしているように感じました。誰かのために自分ができることをする…というのは、この団地のマインドのようです。

普通、「コミュニティ活動」というと、お祭り等のイベントの実施や趣味の活動を思い浮かべますが、ここで言う「コミュニティ活動」とは、何か、コミュニティのために役に立つ活動をすることなのです。

植栽の手入れをするグループ、高齢者の生活サポートをするグループ、社協の活動をサポートするグループ、敷地内の環境整備をするグループ、イベントを応援するグループ、広報紙の発行をサポートするグループ…等々、誰かがその必要性に気が付いたときに、周りに声を掛けてできたグループがたくさんあるのです。これらの活動を、このマンションでは「コミュニティ活動」とごく普通に呼んでいるのです。

コミュニティ活動なので、できる人ができる時に参加するものです。広報紙でその活動や予定が紹介されているので、気軽に参加することができます。それに参加することで、他の人との会話もでき、体も動かし、何かの役に立てた実感があり、コミュニティの一員だとの感覚も得られるのですから、まさに、コミュニティ活動ですよね。同じ、イベントの準備でも、自治会当番で、義務と感じながらやるのとでは、マインドがまったくちがうのです。

「鉄棒おじさん」の活動は、まさに、ひとりコミュニティ活動」なのだと思いました。この団地の方々には当たり前のことなのでしょうが、自分なりに、自分が暮らしているコミュニティに役立とうとすることが、「コミュニティ活動」だと思っていることに、何だか、私は感動しました。

高経年団地であっても、公園には子供たちの姿が絶えず、盆踊りもある本格的な夏まつりには、たくさんの子供たちが集まる、世代が循環している秘密は、このマインドにあるのではないかと思いました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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