安倍官邸が性暴力裁判の山口氏をアメリカへと逃した卑怯な手口

arata20191226
 

先日掲載の「伊藤詩織さん勝訴も山口氏の信じ難い暴言を糾弾せぬメディアの恥」でもお伝えした通り、性犯罪を巡る民事裁判で敗訴するも、判決後の会見等で伊藤さんに対し侮辱的とも言える暴言を放つなど、強気の姿勢を崩さない山口敬之氏。その山口氏と安倍首相との間に、適切とは言えぬある「ひとつの事実」が浮上しました。元全国紙社会部記者の新 恭さんは今回、自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、伊藤詩織さんが内部告発者から得たというその情報を記しています。

民事敗訴の山口氏、高圧的反論の背後に官邸の存在

「お話をさせてください」。ジャーナリスト、伊藤詩織さんは警察官を待ち伏せし、返答を求めて追いかけた。警察官はあわてて逃走した。2017年秋のことだ。

警察官といっても、相手は警視庁刑事部長だ。伊藤さんがレイプされたと主張するその相手、元TBSワシントン支局長、山口敬之氏の逮捕を、なぜ寸前に取りやめさせたのかを当時の中村格刑事部長に聞こうと、出勤途中に突撃取材を試みたのだ。

その後も伊藤さんは文書で中村氏自身や警視庁に問い合わせたが、返事はない。山口氏は書類送検されたものの不起訴となり、検察審査会でも不起訴相当とされたことをもって、身の潔白を声高に主張している。

逮捕状は出た。帰国する山口氏を成田空港で高輪署の捜査員が捕まえる段取りも決まった。それでも、上層部のツルの一声で、取りやめになった。その謎を、伊藤さんが解き明かしたいと思うのは当然のことだ。中村氏がかつて菅官房長官の秘書だったことも、詩織さんの疑念をふくらませた。

このまま泣き寝入りはできない。伊藤さんは民事裁判で真相を明らかにすべく、2017年9月28日、山口氏を相手取って1,100万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。素顔をさらして記者会見し、BBCなど海外メディアにも出演して、自らの事件や、日本の性暴力をめぐる社会状況について発言を続けた。

山口氏も黙ってはいなかった。月刊「Hanada」で、伊藤さんの主張を全面的に否定、2019年2月には慰謝料1億3,000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴した。

東京地裁は伊藤、山口両氏の訴えを同時に審理し、12月18日、山口氏の請求は却下、山口氏が伊藤さんに330万円を支払うよう命じた。伊藤さんの全面勝訴である。

新聞に掲載された判決文の要約を、さらに簡単にまとめてみた。

原告(伊藤)と被告(山口)が、被告が宿泊するホテルの居室に滞在中、被告が避妊具をつけずに性行為をした事実については当事者間に争いがない。

原告はすし店のトイレで意識を失い、千鳥足で出て、タクシー内で嘔吐、ホテルに到着して2分以上経過後に被告に引きずられるように降車し、部屋まで被告に支えられる状態だった。強度の酩酊状態と認められ、ホテルで目を覚ますまで記憶がないとする供述と整合的だ。

原告がシャワーを浴びず午前5時50分にタクシーで帰宅したことは、合意のもとの性行為として不自然で、一刻も早く去ろうとする行動とみるのが自然だ。合意に基いていないと周囲に訴え、捜査機関に申告していた点は、性行為が意思に反して行なわれたことを裏付ける。

すし店と恵比寿駅は徒歩5分程度で、被告がタクシーに原告を乗せた合理的理由を認めがたい。原告は電車で帰る意思を示していたのに、被告は運転手にホテルに向うよう指示した。被告の供述は原告の言動という核心部分について不合理に変遷し、信用性に重大な疑念がある。

原告の供述は客観的な事情や行動と整合し、被告の供述より相対的に信用性が高い。被告が意識のない原告に合意なく性行為に及んだ事実、原告が意識を回復し性行為を拒絶した後も体を押さえつけて継続しようとした事実を認める。

要するに、常識的な見方だ。コーヒー一杯ですむ就職相談を、なぜ安くもない酒場を二軒もはしごして、しなければならないのか。自分の庭に飛び込んできた若い女性に対して下心がなかったと誰が思うだろうか。一人で帰らせるのが危険だと思って自分の泊まっているホテルに連れて行ったというのなら、別の部屋をとるなり、近くの他のホテルを探すなり、いくらでも方法があっただろう。

2015年4月3日の夜から翌日早朝にかけて何があったのか。真実は二人しか知らない。

伊藤さんは「意識が戻ったのは翌朝の午前5時ごろ。ホテルのベッドの上で裸にされており、山口氏が私の上にまたがっている状態でした」と主張。山口氏は「午前2時から3時に、伊藤さんが半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった」と反論する。

合意があったかどうか。証拠を出せと言われても、物証などあるはずがない。だから、公判維持が難しいこの種の事件の立件を警察や検察は避けたがる。だが、レイプ被害を受けたと自覚する女性の身になってみれば、無念を晴らす方法が何もなく、心の傷を一生背負わなければならない理不尽は、いかばかりだろうか。

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