伊藤さんは山口氏に続いて、特派員協会の会見にのぞんだ。その席上、山口氏と安倍首相にかかわるひとつの事実に言及した。伊藤さんが取材を続けるなかで、ある内部告発者から得た情報だという。
それによると、2015年10月、アメリカの独立研究機関「イースト・ウエスト・センター」に山口敬之氏を研究員として派遣するよう、首相官邸から笹川平和財団に要請があった。イースト・ウェストセンターは、笹川平和財団の助成を受けている。
内部告発者の話では、同年4月に安倍首相がSPFUSA(笹川平和財団米国)で行った講演の「見返り」として、山口氏派遣の要請があったのだという。山口氏が書類送検されたのは同年8月のことだ。ならば、検察が捜査しているさなかに、官邸が山口氏のために骨を折ったということになる。
伊藤さんはイースト・ウエストセンターを訪ねた。なぜ山口氏が研究員に選ばれたかを問うと、こういう答えが返ってきた。
「本来なら非常に難しいプロセスを経てフェローが選出されるが今回、山口さんは笹川平和財団の依頼で選ばれました。非常にイレギュラーなプロセスです」
山口氏はこの選定により、特別ビザを取得し再び、アメリカに戻ることができたのだと伊藤さんは指摘する。山口氏の依頼で、イースト・ウエストセンターから除籍になったのは2017年3月19日のことらしい。
山口氏は会社に無断で「週刊文春」に記事を発表したことがもとで左遷され、2016年5月30日、TBSを退社した。その1か月後、ちょうど参議院選挙の直前に、安倍首相を称賛し、山口氏自身を自賛する「総理」なる本を出版した。
その後、山口氏が森友学園問題などで数多くのテレビ番組に出演し、安倍首相に有利なコメントをしてきたことは言うまでもない。
民事訴訟での伊藤さんの勝訴により、マスメディアもこの事件について大きく報道するようになった。山口氏については、官邸の口利きでいくつかの企業から多額の顧問料を受け取っていたという報道もある。山口氏の裏側で、メディアコントロールに憂き身をやつす安倍首相周辺の人々が動いていたのかどうか、野党は通常国会でしっかりと追及すべきである。
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