新人教育において、忙しい、面倒だからという理由で行われがちな「とりあえずの指導」。しかしこうした指導が後に大きなマイナスになるとするのは、接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんです。坂本さんは自身の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』で、「とりあえずの指導」を危険とすら言い切る理由を記しています。
とりあえずで教えると
講師をしている学校の生徒の中に、アパレルショップでアルバイトをしている学生がいます。もちろん何人もそういう生徒はいますが、その中の一人が、ファーストアプローチの授業の中でこんなことを言っていました。
「とりあえず、『何かお探しですか?』とか、『こちら可愛いですよね』とか、『気になるものがあれば、広げてみてください』みたいな声かけをしてって言われてます」
と、教えられているというのです。まだ、アルバイトを始めて間もない学生ですが、とりあえず、声かけをしてもらうために、こうしたよくある声かけの言葉を教えられて実践しているのですね。
これって、めちゃくちゃ危険なことだと思いませんか?
上記のような声かけは、私はまず間違いなくオススメしません。むしろ、これらの声かけをすると、お客様からは敬遠されてしまうよと伝えることがほとんどです。状況によっては、使わないこともありませんが、こうしたアプローチで成功することはほとんどないので、やめておくように教えます。しかし、本来、一番そうした部分に気をつけておかなければならないはずの現場で、「とりあえずこうして」という教育がされてしまっているわけです。
アプローチのワードそのものについては、今回は割愛しますが、教わった方の学生は、それが正解なのだと信じ込みます。教える側が、例え、「とりあえず」のつもりでも、教わる側からすれば、その教育こそが、正しいものになってしまうわけです。すると、後々の修正が非常に難しくなります。
それは当然ですよね。最初に教えたことが、後になって、「いや、あれはとりあえずの話だから。本当は、違うやり方じゃないとダメで、これこれこうしてね」なんて言われても、何のこっちゃです。だったら、最初から正しいやり方を教えてくれないと困ってしまいます。
教わった販売員は、正しくないやり方を覚えてしまうことになりますし、教える側は、再度教育し直す必要が出てきますし、お客様に至っては、嬉しくない接客をされてしまう可能性が高くなる。当然、売上にも影響を与えるのですから、誰一人として、得をしない状況が生まれます。教育をする人は、この責任を理解しておかなければいけないと思うんです。
自分たちにとっては、時間がなかったり面倒だったりで、「とりあえず」のつもりでも、教わる側にとっては違います。その1回が全てであり、その「とりあえず」こそが、正しいものになるのです。だったら、多少大変だったとしても、「とりあえず」ではなく、きちんと教育をしていかないと、余計に大変な思いをします。
「とりあえず」のつもりで、教育をしてしまっていることはないでしょうか?
今日の質問です。
- 「とりあえず」のつもりで、これまで何かを教えたことはありますか?
- なぜ「とりあえず」の教育は危険なのでしょうか?
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