【書評】令和24年に起こる日本にとって最大のピンチとは一体何か

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平成時代に政権を担った人間たちが放置した少子化問題は、令和に生きる人々をどこまで追い詰めることになるのでしょうか。今回、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、人口減が日本社会に与える影響を綴った一冊。柴田さんが「鋭い」と評価する著者の「未来透視」とは?

偏屈BOOK案内:河合雅司『未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること』

61QYhdCE3uL未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること
河合雅司 著/講談社

令和のいま、平成を振り返ると「少子化を傍観した時代」だったと著者は捉えている。平成元(1989)年は「少子化日本」にとって象徴的な年だった。合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産する子供数の推計値)が1.57だった。一時的ショックはあったがすぐ忘れさられた。2005年には過去最低の1.26にまで下がった。それでもまだ、政府や国会が対策に本腰を入れることはなかった

平成の大人たちがこの問題を見て見ぬふりを続けた結果、いま地方消滅や年金制度破綻の危機が叫ばれてから大慌てする姿は滑稽ともいえるが、笑っている場合ではない。この「国難」をどうする。過去の出生数減少の影響で、出産可能な年齢の女性数も激減しており、日本の少子化は簡単には止まらない。人口減少は二段階で進む。第一段階は2042年まで、若者減少・高齢者増加が続く

第二段階は2043年以降、高齢者は減り、若い世代はもっと減っていく、人口が急落する。しかも総人口の4割近くが高齢者。社会の担い手が不足し、日常生活がいろいろな形で麻痺していく。人口減少も少子高齢化も全国一律で進むわけではない。地域差が目立ってくる。人口集中が続く東京都は2030年にピークアウトするものの、2045年は1,360万余を維持する。そのとき鳥取県は44万8,529人。

著者は『未来の年表』『未来の年表2』でモンスターの概観を捉え、その存在を世に知らしめてきた。第3弾となる本書では、根本的な社会の作り替えに必要なデータを取得しながら、3つの画期的なアプローチでモンスターに挑んでいる。まず、現在を生きる人々が国土をどう動いているのかを追う。次に、未来の日本人が日本列島のどこに暮らしているかを明らかにする。

そして3つ目は令和時代に我々が成し遂げるべきことを、地域ごとの事情を勘案しながら提案する。もっとも不確定な要素も多いが、それは〈今後の取組み方次第で未来は書き換えが可能〉ということだ。今後はエリアマネジメントが重要になる。その意味では「未来の地図帳」は人口減時代を生き抜くためになくてはならないツール、と自信満々である。確かに余人の追随はない。

政府は人口減対策として「無理解」な動きをしている。その典型例が外国人労働者の受け入れ拡大である。もはや「移民政策」へと大転換か。目先の人手不足は解消されるが、問題の根本解決にはつながらず、むしろ日本の衰退を早める。国内マーケットは急速に縮むのに、「外国人労働者」を導入し生産過剰、サービス過剰にしてどうする。まさか次は「外国人消費者」の受け入れ???

それは絶対にダメだ。あっという間に国のカタチは変わってしまう。東京一極集中は是正されたほうがよいが、簡単に歯止めがかけられないのが現実である。そうである以上、もはや一極集中を前提として人口減少の時代を考えるべきだ。「東京圏を全く違う歩みを辿る『外国』と位置づけ、非東京圏の各エリアは人口が減っても成り立つ仕組みへ転換することで、共存する道を探る」のだ。

令和の日本において必ず起きることが2つある。まず、高齢化の進展。高齢者数がピークを迎え日本が最大のピンチに陥るのが2042(令和24)年。もうひとつは末端で壊死するように各地で人が減っていくこと。ああそうですか。年寄りのわたしはびくともせんがな。主観や希望的観測を徹底的に排除した未来透視が鋭い。政治家や官僚にぜひとも熟読してもらいたい本である。

編集長 柴田忠男

image by: Suptar / Shutterstock.com

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