子どもを「認めること」は大切だとわかっていても、いざ実践しようとなると、どんな言葉をかけていいものか戸惑ってしまうものではないでしょうか。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役教師の松尾英明さんが、「口癖」と「認める言葉」の関係性等について考察しています。
口癖は、香気
先日のセミナーでの気付きのシェア。日常の言葉かけについて。
人には、口癖がある。ふとした時に口から漏れており、かつ本人には自覚がないものも多い。教師という立場の場合、自分では気付いていないが、子どもたちには大きな影響を与えている。なぜなら、口癖は、無意識に自分と周囲の人に繰り返し行われる言葉かけだからである。
講師の一人が「ほめる」の実践で有名な先生が、どんな言葉をかけているのか、調べてみたという。それは「すごいなぁ」であったという。思えば、私自身もよく口にしている。子どもに対して、本当にすごいと思うことが多いからである。ただこの「すごいなぁ」は、ほめているのではない。感心、場合によっては感嘆しているのである。「ほめる」というより、「認める」に属する。
このほめると認めるの違いがよくわからないということで、よく質問を受ける。例を挙げる。
子どもが100点をとって「すごいなぁ」と言うとする。本当は100点の時に「すごい」というのはリスクが高いので私は大抵言わないが、やりがちな場面だと思うので敢えて例に出す。
● 参考記事:「『100点答案』を褒めると勉強嫌いになる」プレジデントオンライン
この時ただ100点だから「すごいなぁ」と言ったら、子どもは素直に「100点はすごい。認められる」と考える。裏を返せば「100点以外はすごくない。認められない」という価値観をもつ。一回ならまだしも、これが毎週のように何年にも渡って継続的に行われれば、その価値観は一生を左右するほど強固になっていく。
「よくがんばっていたからね。すごいなぁ」と言えば、かなり意味が変わる。「がんばったこと」自体を認められたと考える(そう感じるように伝える)。
書いていて、文面だと伝わらないとしれないとも思ったが、そういうことである。伝える時の表情とか声のトーンとかも重要なのである。「上から目線」になると、ほめたことになるし、フラットな立場からだと、認めたことになる。
ちなみに、幼稚園の先生の場合、最も多い口癖が「嬉しいね」だそうである。一緒に喜ぶというフラットな立場での、望ましい声かけである。
常日頃、自分にどんな口癖があるかは、重要である。子どもに対する影響力はもちろん、それ以上に自分自身に最大の作用をもたらす。他人への言葉がけは、そのまま自分への言葉がけ、価値づけである。
「薔薇の花を与える手には、常にほのかな残り香が漂う」という諺の通りである。口癖とは、香気そのものである。どうせなら、日常的に良い香りの花を携え、人に手渡したいものである。
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