中国企業の貨物船をスルー
もう1つ、国連安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネルは、北朝鮮で2月下旬に開かれる暗号資産(仮想通貨)に関する会議が安保理決議違反の可能性が高いとして、参加しないよう警告した。専門家パネルが制裁委員会に近く提出する報告書をもとに、「ロイター通信」が15日に報じた。
北朝鮮では昨年4月、ブロックチェーン(分散型台帳)と暗号資産に関する初の会議が開かれ、主催者は、ロイターに80を超える団体が参加したと説明している。会議に出席した暗号資産専門家の米国人はその後、対北制裁逃れにつながる暗号資産情報を北朝鮮に提供した疑いで逮捕されるという事態があった。
専門家パネルの報告書は、会議の発表に「制裁逃れやマネーロンダリング(資産洗浄)を目的とした暗号資産に関する議論が含まれるのは明白だ」と指摘している。安保理決議は、北朝鮮の核・ミサイル開発や制裁回避につながる「金融取引や技術訓練、助言、サービス、支援を提供しないよう加盟国に求めていると説明した。
これに対し日本では、国連安保理事会の北朝鮮制裁決議により、各国が資産凍結しなければならない中国企業の運航する貨物船が昨年1月に那覇港に寄港、海上保安庁が検査し、運航企業を確認しておきながら調査のための拘留など必要な措置を取らずそのまま出港させていたことがあった。専門家は、日本の対応は「明らかな決議違反」としているが、この体たらくでは日本は国際社会の場で北朝鮮の核・ミサイル問題についての発言も相手にされなくなるだろう。この中国企業は2017年8月の国連安保理決議で全面的に禁じた北朝鮮産石炭の取引に関わったとして制裁を受けていた。
密輸船を巡っては、韓国政府が18年8月以降に入港禁止とした複数の船舶が措置後30回は能代港(秋田県)を含む日本各地に入港が判明しており、この船は、その中の一隻であった国連決議の「完全履行」を掲げる日本が核・ミサイル開発の資金源となる石炭密輸船の活動を事実上、看過していた実態を裏付けるものであった。金正恩体制への国際社会の包囲網が少しずつ狭められてきている昨今にである。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
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