朝鮮半島の正月にあたる1月25日、金正恩国務委員長の叔母であり、さらに金正恩氏による「毒殺説」も流れていた金敬姫元労働党書記が6年振りに姿を表したことが、様々な憶測を呼んでいます。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴31年の日本人著者が、両氏の複雑な関係性に詳しい識者の意見をひきながら、なぜこのタイミングで金敬姫氏が表舞台に引き出されたのか、その真相を探っています。
金敬姫が6年ぶりに登場
2013年12月に処刑された張成澤（チャン・ソンテク）氏の夫人の金敬姫（キム・ギョンヒ＝金正恩の叔母）元労働党秘書を、金正恩国務委員長が6年ぶりに登場させた。その背景は何か。
韓国では旧正月がほんとの正月らしい正月。今年は1月25日が旧正月当日。その日、三池淵（サムジヨン）劇場で金正恩および夫人の李雪主（リ・ソルジュ）と共に金正日（キム・ジョンイル）総書記の妹であり、処刑された張氏の夫人だった金敬姫（74歳）元労働党秘書が、2013年以降初めて公開席上に現れた。金正恩国務委員長の叔母である金敬姫元労働党書記が、夫の張成沢元国務委員会副委員長の処刑（2013年12月）以来6年ぶりに公の席に登場したことで、その背景に関心が集まっている。
テ・ヨンホ（太永浩）元英国駐在北朝鮮公使は27日、自分のブログに掲載した文章で、2013年、夫の張成澤処刑とともに粛清されたとされる金敬姫氏が、実際には水面下で金正恩の後見人の役割をしてきたとし、「今回の金敬姫の登場は、後見政治の終了宣言、金正恩の『一人立ち』の出発と見られる」と明らかにした。また今回の金敬姫の登場では、「張成沢の粛清は、金敬姫が発起し実行は金正恩が行った可能性が高い」と主張した。太元公使は「金正恩と北朝鮮幹部をつなぐ金敬姫と張成沢を同時に打つというのは、金正恩としては途方もない政治的賭博」とし、「金敬姫の発起や黙認、あるいは積極的な支持なしに張成沢粛清は不可能なことだったはず」と説明する。「張成沢が粛清され、反比例的に金敬姫ラインはさらに昇進した」と語る。太元公使は「金敬姫の登場は北朝鮮住民たちにも衝撃だろう」とし、彼女が突然公の場に登場した背景には、健康問題との関連があるだろうと分析する。太元公使は「この6年間、金敬姫が金正恩の後ろで高官を管理しながら水面下で後見人の役割をしてきたと仮定すると、金敬姫を突然登場させた原因は、金敬姫の健康が悪化している証拠」だとし、「もし、金敬姫が突然死ぬことにでもなったら、金正恩は永遠に叔母を毒殺したという汚名から逃れられなくなる。だから早く北朝鮮社会に叔母の健在感をアピールし、叔父を処刑した張本人は自分ではなく叔母の決心であり、自分はこれを履行しただけということを見せたかったはずだ」とし、「金正恩の長期執権で汚名として残っている『金敬姫毒殺説』を払いおとし、叔父の処刑責任を叔母に転嫁するという誠に金正恩らしい『妙手』であり、金正恩一流の『小細工』」とダメ押しする。
金敬姫の登場が今後の北朝鮮政策に及ぼす影響はどうか？太元公使は「今後、金敬姫の生の期間がいくらも残っていないと見るなら、今後の北朝鮮の政治の行方を予測することができる」、「金敬姫は北朝鮮では『革命の2世代』、韓国で言うなら『おいぼれ、旧勢力、理念派、強硬派』に属する」と話した。「昨年2回あった党全員会議を契機に、金敬姫ラインの多くの幹部が家に帰った（権力から遠ざかった）。金敬姫ラインはほとんどが70・80代で、金敬姫より少し上か同年輩たち」とし、「今、北朝鮮権力序列で70代もあまりいない。数年内に70代が全ていなくなって60代が占めるようになると、金正恩と幹部の間の年齢差が30年と狭くなる」と語った。太元公使は「そういうふうに、おいぼれや旧勢力が抜けてゆき、金敬姫の影響力もなくなれば、金正恩、金汝貞（キム・ヨジョン）など金氏一家の3代が独自に国政を運営することになるわけだけれど、こうなれば、弾力性が増すと同時に混乱も大きくなるだろう」と見通した。
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