新型肺炎で日本のメディアがほとんど報じていない検査体制の真実

 

第一例目の患者が国内で発見されたのが1月14日だ。これを受け、厚労省はホームページ上で「国民の皆様へのメッセージ」を掲載している。

新型コロナウイルス関連肺炎に関するWHOや国立感染症研究所のリスク評価によると、現時点では本疾患は、家族間などの限定的なヒトからヒトへの感染の可能性が否定できない事例が報告されているものの、持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はありません。武漢市から帰国・入国される方は、症状がある場合には速やかに医療機関を受診し、武漢市の滞在歴があることを申告してください。

家族間のヒト・ヒト感染をほぼ認めているのに、これが他人に移って広がっていくという可能性に言及せず、「持続的な感染への明らかな証拠はない」ということですましている。武漢市から帰国・入国する人も、これではフリーパスだ。

この時点で湖北省からの入国規制を実施していれば、いくらか感染者の流入が少なくて済んだかもしれない。

政府が「入国申請前14日以内に中国・湖北省に滞在歴があるか、湖北省発行のパスポートを所持する外国人について、特段の事情がないかぎり、入国を拒否する措置」を実施したのは2月1日のことである。

武漢は春節に入る前日の1月23日から都市封鎖され、市民の移動が制限されたが、森雅子法相が2月3日の衆院予算委員会で語ったところでは、武漢から直行便で1月20日~23日に外国人約1,700人が日本に入国したという。それから推定すると、春節前の1か月間に1万~2万人が日本に脱出してきたのではないだろうか。

「水際作戦」はすでにこの時点で、さほど意味がないものになっていたのは、厚労省や専門家なら誰しも認識していただろう。

にもかかわらず、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」をめぐって「水際パフォーマンス」を繰り広げた。安倍政権お得意の“やってる感”を演出しようとしたのだろうが、厚労省の役人の独断専行で、かえって船内感染を広げ、あげく諸外国のメディアから酷評される始末である。

そして誰もが不思議に思ったのは、約3,700人の乗客、乗員全員のウイルス検査をなぜしないのかということだった。

国内でも「既にウイルスが入り込み街の中で散発的な流行が起きていてもおかしくない」とする日本感染症学会の見解がありながら、厚労省の方針で湖北省と無関係な人は検査の対象外とされ、そのためウイルスが日本の街中にどのように広がっているかについてはベールに包まれたままだった。

おしりに火のついた政府が民間の検査会社の助けを借りて検査体制の拡充に乗り出したのは2月12日になってからだ。

当社の連結子会社である株式会社エスアールエルは、厚生労働省及び国立感染症研究所の依頼により、新型コロナウイルスの検査を2月12日(予定)より受託することとなりましたのでお知らせいたします。

 

(みらかホールディングスのサイトより)

SRLは日本国内の病院から送られてくる血液、便、組織などの検体を一日20万件もさばいているといわれる。ウイルス検査装置は最新式のもので、公的な研究機関とは比較にならないくらい手馴れているため、スピーディな検査が可能だ。

今後はこうした民間の検査会社をもっと活用していかないと、追いつかないだろう。

医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏は、政府が予算をつけてメガファーマを誘致すれば、クリニックのような小規模医療機関でも、検査をSRLなど民間検査会社にオーダーできると指摘する。

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